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2019.08.07

ギルの笛とハーメルンの笛

小学生の頃の記憶なので、非常に曖昧な部分が多い話なのですが、私の田舎のスーパーでは朝一番で行くと、時々頭に激痛が走るほどの不快な音が流れていました。

私は、そのたんびに耳を抑えて、悶え苦しんでおったのですが、隣にいる母親はケロリとしたもので全く平気なのです。

周囲の大人たちを見ても、私のようにのたうち回っているものは誰もいません。

明らかに私だけに起きる怪奇現象でした。

そんなある日、私は母親にこんな質問を浴びせかけてやりました。

「自分は、もしかしたら人造人間ではないか」

つまり、小学生の私は「自分があんたの子ではないのではないか」とほざいたのです。

なぜこんなことをほざいたのか、今では朧げな記憶ですが、たぶん当時放映されていた『人造人間キカイダー』の影響をかなり受けていたのだと思います。

中高年の皆さんの多くがご存知の通り、キカイダーには唯一の弱点がありました。

それが悪党の首領・ギルが奏でる『悪魔の笛』です。

その笛の音を聞くと、人造人間のキカイダーは滅茶苦茶苦しむのです。

おそらく、その姿がスーパーでのたうち回る私の姿と重なったのでしょう。

ともあれ、当時の私は「あのスーパーには『ギルの笛の音』が流れており、自分が人造人間だから、その音に苦しんでいるのだ」と確信したようなのです。

当時、その話をすると、いつも母親は私の額に手を当てながら、可哀想なモノを見るような目をしていました。なぜか、そのシーンだけはハッキリと覚えています。

それからしばらくして、そのスーパーから「ギルの笛の音」は消え去りました。

そして私は大人になり、「ギル」のことはすっかり忘れて上京したのです。

そんなある日、私は都内にあるスーパーで、また『ギルの笛の音』を聞いてしまったのです。

ヘドが出るような不快音です。

ちょうど隣に私の友人がいたので、この不快音について尋ねてみたところ、こんな答えが返ってきました。

「ああ、もしかしたらそれは『ネズミ除け』の高周波だね。俺の田舎でも食材を扱う大型スーパーなんかでは流していたよ。普通は閉店から翌朝の開店までの人のいない時間に流してるんだけど、よく開店時に音を消すのを忘れて凄まじい音が流れていたね。俺もあの音は嫌いだったよ」

なんと。ここにも人造人間がいました。

しかし、友人ときたら、続けてこんなことをのたまうのです。

「その音が聞こえる奴は脳がネズミに近いらしいよ。原始的な脳なんだってさ。モスキート音同様、普通は大人になったら聞こえなくなるんだけど、お前、まだ聞こえるの?」

なんということでしょう。

私は人造人間とは程遠い「ネズミの脳」だったのです。

母親が可哀想なモノを見るような目をした理由がその時初めてわかりました。

今、都内ではネズミ除けの高周波はほとんど使われていないそうです。

理由は、24時間営業の店が増えたから。

おそらく「ギルの笛」を流しっぱなしにしておくと、無意識のうちに若い世代の客が遠のいてしまうからでしょう。

当然、私のように「ネズミの脳」を持つものは絶対にそんな店には近づきません。

本日、某コンビニエンスストアの店内にネズミが大発生している動画がユーチューブに流れ、大騒ぎになりました。

このネズミの大量発生の理由について、テレビに出ていたある識者がこんなことを申しておりました。

「東京オリンピック前の都市開発で元々、ネズミが住んでいたところが奪われたのではないか」

言いえて妙な話です。

だからと言って、その対策に店内をネズミ捕りだらけにするわけにもいかないでしょうし、毒饅頭をばらまいておくわけにもいかないでしょう。

ネズミ対策はしばらくお手上げ状態と言わざるをえません。

こうなったら、同じ音でも「ギルの笛」と正反対にネズミを夢心地気分でまとめてどこかに連れて行く「ハーメルンの笛」でも開発してみてはどうでしょう。

逆転の発想でネズ公をどこか一箇所にまとめておけば、店舗に湧き出てくる心配はありません。

効果絶大の予感です。

でも、その笛の音に私もついて行ってしまいそうで怖いです。

文責:編集長原田