『クライングフリーイワサキ 岩崎友彦短編特集』当日レポ
去る7月30日、先日このコラムでもご紹介した映画監督・岩崎友彦氏の短編上映会が東京渋谷のLOFT9で開催されました。
過去の岩崎映画の上映会といえば「3人から多くて5人」(ご本人談)という悲惨極まりないものだったとお伺いしていたので滅茶苦茶心配していましたが、なんと当日の来場者は100人強。会場にある座席を埋め尽くし、なおも立ち見まで出そうな勢いだったのです。
この事態には、これまで岩崎監督を応援してきた当サイトとしても嬉しいやら恐ろしいやら。若者言葉で言えば「マジ卍」で「ガクブル」です。
今や、岩崎監督は50歳を超えてようやく『時代の寵児』になったと言わざるを得ません。完全に岩崎監督の時代がやってきたのです。
その証拠に会場は異様な熱気に包まれており、観客は全員、興奮して小便をちびりそうな顔をしています。
記者はそれ以上に興奮いて脱糞寸前です。
さて、そうなってくると肝心なのは「作品の内容」ということになってきますが、岩崎友彦監督の短編作品集を映画評論家が一言で表現したら、おそらく以下のようになるのでしょう。
『狂気とバイオレンス、銃声と血しぶき、そしてめくるめくエロス!』
この部分では『クエンティン・タランティーノ監督作品』とまったく一緒です。
実際、岩崎作品の作品は一本一本の上映時間が異常に短いだけで、『パルプ・フィクション』や『キル・ビル』となんら変わりはありません。
あえて違いを言えと言われれば、そこに『半笑い』というスパイスが入ることぐらいでしょうか。
もちろん当日も会場は徹頭徹尾、半笑いに包まれておりました。
また、今回のイベントでは、監督と出演者たちによる「撮影裏話」も炸裂。
その内容があまりにも突飛で、ことごとく度肝を抜くものでしたので、今回は作品の内容と裏話も快活60の皆様だけに特別にご紹介しましょう。
1~4 TV「エビ天」出品作品コーナー
『トモヲ⇔ヨーコ 愛の往復書簡』(1991/3分)ほか全4本
言わずと知れた岩崎監督節が炸裂。
カニに扮した監督がギターマンとともに渋谷の路上で大勢に人々と歌うシーンがあるのですが、当時ロケをしている監督たちの横で、オ○ム真理教の方々も別の歌を歌っていたそうです。
5『ややこしい関係』(2014/13分)
【出演】西入美咲、岩崎友彦 他
多重人格者同士の夫婦による怒涛の愛の世界が凄すぎです。この作品では監督自ら主演も務めており、その狂気の一部始終を垣間見ることができます。
6『大きな春子ちゃん』(2014/4分)
【出演】有元由妃乃、松崎まこと 他
YouTube11万回も再生された作品。当日は「大きな春子ちゃんがやってくる」という噂が流れていましたが、残念ながらいらっしゃいませんでした。
7『モザイクマン』(2015/4分)
【出演】衣緒菜、結城輝、島野千尋、レイパー佐藤 他
今回出品の作品の中で、最も反社会的ではないかと疑われた作品。しかし、会場からは、愛液も精液も飛び散ることはありませんでした。代わりに笑いが絶えませんでした。エロと笑いは紙一重です。
8『BOOB SLINGER』(2016/4分)
【出演】Artegg Yumi、北岡龍貴(特別出演)他
絶対に言ってはいけない“おっぱい“。その禁句を言うと、さすらいの女ガンマンに皆殺しにされるという恐ろしい作品でした。
9『帰ラないマン』(2017/4分)
【出演】上田慎一郎、松井理子、宮本なつ、谷洋幸 他
「カメラを止めるな!」の監督、上田慎一郎さん主演のこの作品。地球防衛軍の役だけでなく、「帰ラないマン」の着ぐるみの中までご本人だったそうです。
10『まん ここ わい』(2018/4分)
【出演】西入美咲、村田啓治、岩崎友彦 他
言わずと知れた古典落語をベースにしたこの作品。せっかく「まん ここ わい」と南国の謎の呪文のようなタイトルにしたのに台詞では平然とまんまのイントネーションで叫んでしまっています。当然上映後登壇した監督も普通に繋げてタイトル連呼! 絶対に民放局では放送できません。
11『豆鉄砲の女』(2019/4分)
【出演】鈴木佳恵、藤本紗也香、島野千尋、エム 他
先日「快活60」でも取り上げさせていただいた「おまめ映画祭」への出品作品。
12『バブルジャンパーズ&ホイールチェアクイーン』(2019/28分)
【出演】真魚、古矢航之介、前田祐樹 他
あの「カメ止め」の真魚さん主演の青春短編!
バブルレッド役の俳優さんの役名を青田くん、にしたせいで、ずっとバブルブルーだと思い込んでいた岩崎監督。登壇者全員からフルツッコミを受けていました。
13『クライングフリーセックス』(2018/15分)
【出演】合アレン、マイケル・ファンコーニ、木村圭作、おかひでき 他
まさかの第二弾の予告編の発表に、会場は騒然!
11月9日公開のこの続編、前作以上にとんでもない怪作になりそうです!
さらにライブコーナーでは、「ややこしい関係」「まん ここ わい」などにも出演し、何度も岩崎監督とアダルトな絡みを演じたという女優、西入美咲さんも登壇。
絡みのシーンについて語るのをなぜかモジモジと恥ずかしがっている岩崎監督をリードして自ら多くを語ってくださったのが印象的でした。素敵すぎます。
そしてこの女優さん、ただの女優さんではありませんでした。
なんでも、“下ネタばっかり言う”が売りの「平成バブル」というユニットを結成しているということで、トークの後に相方の天野静香さんとともにショートコント「手マンの神様」のネタ見せ&熱唱ライブで会場を盛り上げてくださいました。
ネタの内容は…インランすぎて文字にはできませんが、凄まじいの一言。
中高年の皆様は今後も「平成バブル」から目が離せません。
気になる方は、9月27日に浅草木馬亭への出演が決まっているそうなので、助平な紳士淑女の方は、ぜひ観に行ってみてください。
終盤のライブでは、 “クライングフリーセックス”主題歌を歌われた谷洋幸さんも熱唱してくださって、全13編に及ぶ映画祭が無事幕を閉じました。
コンプライアンスに縛られたエンタメが面白いはずがない。
難しい顔して考えなくても、座ってみているだけでお腹の底から笑えてしまう映画。それが奇才・岩崎友彦作品なのです。
色々な「縛り」に苦しむ悩み深いおじさんたちこそ必見です。
それにしても、会場を後にした皆様の幸せそうにニヤついた顔が忘れられません。
『まん ここ わい』ならぬ、『岩崎監督こわい』な3時間でした。