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2018.12.24

【クリスマスSP】奇跡の紳士

本日はクリスマスイブです。今夜は世界中で様々な奇跡が起こるといわれています。

せっかくの夜ですから、たとえシニアといえども街に繰り出してみてはいかがでしょうか? ひょっとしたら、とんでもない奇跡に巡り合えるかもしれません。

なにしろ、こんな私でさえ奇跡に巡り合えたのですから。

あれは私が学生時代のクリスマスイブのことでした。当時、金もなく彼女もいないチンカス学生だった私は、昼間からまんじりともせずに半分、神田川に傾いた四畳半一間の下宿に立てこもっておりました。

その頃、生活のためにクソまずい居酒屋でバイトをしていたのですが、この夜ばかりは休みをいただきました。

聖夜にわざわざこんな激安居酒屋に来るクソカップルの世話をするのが死にたくなるほど嫌だったのです。

今思えば、学生時代の私はブサイクなくせにプライドだけは高かったのです。まさにチンカスよりも器の小さな男でした。

しかしながら、せっかくの聖夜です。拾ってきたエロ本でマスをかいて終わるのも、あまりにも虚しかったため、気晴らしに銭湯に行くことにしたのです。

想像していた通り、聖夜の銭湯はガラ空きでした。

「やっぱりワシ以外には、こんな夜に一人で銭湯などに来るやつはおらんな」

脱衣所で腐りかけた猿股を脱ぎながら、独りごちていると、脱衣棚にもうひとつ着衣の入っているカゴを発見しました。広い東京。似たような境遇の人はいるものです。

洗い場に入ると初老の紳士が一人、悠々と湯船に浮かんでおりました。私が入ってきたのを見て、紳士は軽く会釈をしてくれたので、私も会釈をしました。

おそらく、お互いにこんな夜に一人で銭湯に来ているという仲間意識からでしょうか。私と紳士はすぐに言葉を交わす間柄になりました。

若いのに聖夜にたった一人で渋柿みたいな顔とペニスをしている私を見て哀れに思ったのでしょうか。紳士は、しきりに私に笑い話をしてくれます。しかし、荒んだ心の私は愛想笑いしかできない始末。

そんな私を見て紳士は、「仕方ありませんな」と言いながら「ものすごいモノをお見せしましょう」とおっしゃるのです。

銭湯の洗い場で男が見せる「すごいモノ」と言われても、未熟者の私にはキンタマぐらいしか思いつきません。訝しがっている私に紳士は湯船に入るように促します。

末恐ろしさは感じましたが、私は紳士に言われた通り、湯船に浸かりました。紳士は私より3メートルほど離れた場所で肩まで湯船に浸かっています。

「いいですか。そこを動かないでくださいね。波が立たないほうがうまくいくんです」

紳士はそう言うと一瞬、何かを念じたような顔をしました。

するとどうでしょう。私の顔の前に突然、気泡が現れたのです

「オ、オエーーーーーッ」

気泡が破裂した瞬間、とんでもない悪臭が私の鼻腔をつんざきます。

間違いありません。屁の塊です。

しかし、3メートルも離れた場所から、紳士はどうやって私の鼻先に「屁の塊」を送ったのでしょう。

「はっはっは。驚きましたか。実は私は屁を自在にコントロールできるのです。今、お見せしたのは屁魚雷ですよ」

紳士によると、宙空、水中問わずして、半径5メートル以内であれば屁を自由に操れるというのです。

あながち信じられませんが、もし事実だとすれば神が与えたもうた奇跡としか言いようがありません。

紳士曰く、これまでにも「屁爆弾」や「屁ミサイル」、そして先ほどの「屁魚雷」で多くの嫌な奴を懲らしめてきたそうです。まさに「神のいかづち」と言わざるをえません。

このあと、私は銭湯の中で紳士から様々な「屁技」を見せてもらいましたが、それはそれは恐るべきものでした。

しかし、よくよく考えてみれば、何が悲しゅうて聖夜にオッサンの屁を何発も嗅がされなければならなかったのでしょう。

そしてその紳士は今、どこでナニをしていて、誰を屁で懲らしめているのか、皆目見当がつきません。

もしかしたら今夜も、どこかの銭湯で奇跡を起こしているかもしれません。

文責:編集長原田