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2018.11.30

【シニアの映画鑑賞】危険な二人

その男女の様子は明らかに異常でした。

年齢は50歳前後でしょうか。なぜか両者ともに青い顔をしながら腹を押さえ、体を「くの字」にして映画館前の行列に並んでいたのです。

その日私は、大ヒット中のシニア向け映画『ボヘミアン・ラプソディ』を見に行っていました。物凄い盛況振りで、客席はほとんど完売御礼。かろうじて18時からの部がなんとか取れましたが、整理券が配られていたのにも関わらず、待ちきれない紳士と淑女が入り口から大行列を作っていたのです。

そんな大行列の中、例のカップルはちょうど私のすぐ前に並んでいました。男の年齢から察するに「くの字」の理由は勃起してしまったからではないでしょう。どう見ても「若気のいたり」とは程遠い見てくれです。となると、脱糞以外には考えられません。おそらく、男のほうは猛烈な便意を押し殺しながら列に並んでいるのでしょう。

となると、女性のほうはなんでしょう。考えられる原因は2つあります。やはり同じくクソを我慢しているか、生理痛です。

いずれにせよ二人はこのクソ寒い屋外で額から汗を垂らしながら腹を押さえ「くの字フォーメーション」を取っています。女性のほうは硬直状態。男性のほうはケツを左右上下に動かしながら必死でクソを我慢しています

しばらくして、ようやく列が動き出すと男女ともに小股歩きで、まるで卵でも抱えているかのように進んでいき、映画館の暗がりの中に消えて行きました。

ようやく取れた私の席は前から3番目でした。見づらいといえば見づらいのですが、大迫力といえば大迫力です。席が取れず、泣く泣く帰っていった客もいましたから、この席でも御の字といえましょう。やはりクイーンがテーマの映画だからでしょうか。周囲を見渡すと私のようなシニア層がたくさんいます。

ふと気がつくと私の隣の席が2つほど空いています。おそらく予約組でしょう。映画が始まるギリギリまでその席の持ち主は来ません。悠長なものです。

ようやく来た隣の客人は大きなポップコーンを二つも抱えて、すでに着席している客の前を「すみません、すみません」と言いながら空席に近づいてきます。何気なくその顔を見た私は思わずズッコケてしまいました。私の前に並んでいた例のカップルだったからです。

おそらくクソをしてスッキリしたのでしょう。2人とも先ほどとは打って変わって、爽やかな顔をしています。

「どうもどうも」

こんなことを言いながら、私の隣には男のほうがどっかりと腰を落ち着けます。その向こうに女性がちんまりと腰を沈めます。

クソを出し切って腹が減ったのでしょう。二人とも座るなりバクバクとポップコーンを頬張っています。喉元過ぎれば熱さを忘れるとはこのことです。ゲンキンなものです。しかも食い方が汚くて自分の足元はもちろん、私の足元にまでポップコーンをボロボロこぼしています。

それだけではありません。実はこの二人、とんでもないクセモノだったのです。

それは映画の本編が始まった瞬間から始まりました。

パチパチパチパチッ!

なんと二人がスクリーンに向かって拍手を始めるではありませんか。ついつい釣られて私も思わず拍手をしてしまいました。

ここまでならまだいいでしょう。何しろこの二人、クイーンの名曲が流れるたびに一緒になって大絶叫で歌うのです。しかも英語がわからないらしく間違いだらけです。これはタマリマセン。せっかくの映画が台無しです。

そしてついに興奮のした女のほうが暴挙に出ました。こともあろうにカバンの中から光る棒を取り出したのです。アイドルのコンサートなどで使う例の棒です。しかもそれをリズムに合わせて振り回すではありませんか

「ひいいいいっ!」

私は思わず悲鳴をあげてしまいました。私たちの席は前から3番目です。後ろの客からすれば迷惑なことこの上ありません。さらにオゾマシイ光景が私の目に飛び込んできます。

棒の光でうっすら見える女の顔が涙と鼻水でグチャグチャになっていたのです。

「あわわわわっ」

もはやホラー以外のナニモノでもありません。この世に中年女の泣き顔ほどオゾマシイものはあるでしょうか。濃い化粧が醜く崩れ始めています。

「うわぁぁぁぁっ! お、おたすけっ!」

しかし、私の悲鳴も絶叫も大音響の中では虚しくかき消されていきます。

そのうち、さらに最悪の事態が起こります。

急に男のほうが「うっ」というと突然、大絶叫で歌うのを中止したのです。するとその瞬間にプ~ンと芳しい臭いが漂ってきました。

「オ、オエ~~ッ!」

明らかにその臭いは男のケツから漂ってきます。よもや男が興奮してクソを漏らしたのは疑いようのない事実です

「ゲーーーッ!」

もはや映画どころではありません。男の顔を覗き込むと先ほど映画館の前で見たような青い顔をしています。調子に乗ってポップコーンをバカ食いするからです。自業自得です。

しかも、男はまだクソが出たりないらしく、モゾモゾとケツを動かしたり、急に姿勢を正したかと思ったら、腰を折り曲げて息を荒げてみたりと、かなり様子がおかしい状態です。男が動くたびにクソの臭いが私の鼻腔をつんざくのでたまったものではありません。そのうち私までクソがしたくなってきました

こうなると隣の男と二人して便意との戦いです。一緒になってケツを動かしたり腹を抱えたりと大忙しです。隣のグチャグチャな女も含めて映画館の前列3段目はとてつもない地獄絵巻が繰り広げられたのです。

ようやく映画が終わった時、私も男もその隣の女も、しばらく席を立つことができませんでした。その理由はご想像にお任せします。

文責:編集長原田