【還暦放浪記】ホームレスの人探し編
ここしばらくこれといった事件やトラブルもなく、平穏無事な毎日が続いている。ひじょうに退屈だ。そうなると何か面白いこと、ドキドキするようなことをしたくなるのが生まれついての私の性分なのである。
さて何をしようか。
そう考えて思い出したのが先日、池袋のネットカフェで声をかけてきた女性のこと。私に売春を持ちかけてきた、いささか危なげだったあの30代(40代かもしれないが)の女性だ。
あれから彼女はどうしているのだろう? その日のネットカフェ代を稼ぐために、相変わらず春をひさいでいるのだろうか?
ちなみに「春をひさぐ」というのは売春をすること。漢字では「春を鬻ぐ」と書く。売春をするというといかにも生々しく聞こえるが、「春をひさぐ」というと何となくきれいなことのようにも思えてしまう。日本語というのはすごいもんだ。
いかん、話がずれてしまった。元に戻そう。
というわけで、いろいろと考えているうちに気になり出し、池袋に行ってみることにした。もし彼女とうまく出会えて、彼女がそのつもりならもちろん今晩は1万円を払うつもりである。
問題のネットカフェの場所は覚えていたのですぐに分かった。今、午後11時40分。まもなく日付が変わろうかという頃。先日彼女と遭遇したのはちょうどこれくらいの時刻だった。
さっそく喫煙スペースに行ってみる。しかし彼女の姿はない。もしかしたら、これから来るのかもしれないし、今はまだ個室に入っているのかもしれない。そう思ってしばらくそこで待ってみたが、1時を回っても彼女はついに現れなかった。どうやら空振りのようだ。仕方なくその日は眠ることにした。
翌日、同じ時刻に私はもう一度池袋に行ってみた。私は面白いことが好きな性分だが、同時に結構しつこい性格でもあるのだ。
しかし、この日も彼女は来なかった。
もう池袋には現れないのだろうか? 他の場所に行って男を探しているのだろうか?
前回会った時の彼女との会話を思い出してみる。その中に彼女と出会えるヒントがあるかもしれないからだ。
どんなことを話していたっけ。
そういえば、彼女、若い頃から池袋が好きでずっと池袋で遊んでいる。他のところは全く知らないといっていた。それに、ここのネットカフェはお客さんに危ない人がいないのでよく利用しているとも……。
ということは、もしまたお金に困ったり、あるいは池袋で朝まで過ごそうと思ったら絶対にここに来るはずだ。
そう考えた私は翌日もう1日だけ彼女を待ってみることにした。もし来なかったらその時諦めよう。
そして、彼女を探して3日目の夜が来た。はたして私は、彼女と再会することができたのか?
顛末は次回に……。
記事/快活60還暦ホームレス記者:清水一利