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2018.03.09

【還暦放浪記】ホームレス懺悔編

いつもこの「還暦放浪記」を読んでくださっている皆さんに、何はさておきまず謝っちゃいます。

ごめんなさい。ホントに申し訳ない。

なぜ、いきなりこんなことをいわなくてはならないことになったのかといえば、皆さんの期待を裏切る結果になってしまったからである。前回の流れからすると、今回皆さんが予想していたのは山谷の簡易宿泊所に泊ったという体験記だろう。私もそう思っていた。

ところが違うのだ。

実はあの日、私は泊ることができなかったのである。

それも、他ならぬ私自身が原因で。

というわけで、今からその言い訳をする。

率直に結論からいうと、チキンな私はいざとなったら怖気づいてしまったのである。

最初、私は別に何のためらいもなく「一泊2000円」と書かれた近くのホテルのドアを押して中に入っていった。

すると、今晩の宿を乞うた私に、主人は満室だという。

仕方なく隣りのホテルに行くと、ここも満室だという。

さらに3軒目、4軒目と行くものの、やはり部屋はないという返事だった。

??? ん、これはいったいどうなっているのか?

戸惑っていた私に、ホテルの主人がいった。

「この辺のホテルは長期滞在の人間がほとんどだからね。空室はなかなか見つからないと思うよ。それより、あんた、見かけない顔だね。どっから来たの? 仕事はあるの?

その言葉を聞いた瞬間、私は、(ああ、そうか。ここは観光客気分で来てはいけないところなんだ)と悟った。

今思えば、一番最初に入ったホテルの主人も、私のことを珍しい動物でも見るかのように、上から下までなめるようにチェックしていたっけ。

おそらく、こいつは何となく怪しいと思ったから、空室はあったが、満室だといって追い払ったのかもしれない。

そう考えた時、私は突然怖くなった。どんな部屋なのか見てやろうという好奇心もどこかに吹き飛んでしまった。

山谷という街は一種独特な街ではあるが、決して危ないところではない。昼間から酔っ払ってフラフラ歩いている強面のおっちゃんも、話してみると気さくでいい人だったりする。悪い人ではないのだ。

それなのに、私が怖いと思ったのはなぜなんだろう? 何に怖じ気づいたのだろう?

しばらく考えているうちに、あることを思いついた。

山谷は昔も今も労働者の街だ。江戸時代、山谷が街としての機能を持つようになると、どちらかといえば経済的にも家庭的にも恵まれない、言葉は悪いかもしれないが、その日暮らしの肉体労働者が自然とここに集まり、ドヤ街が形成されるようになった。

日々のわずかな稼ぎで酒を飲み、飯を食ってねぐらを確保する。その日を暮らすことだけで精一杯。山谷での彼らの生活はそういうものだったに違いない。三畳一間のうらぶれた部屋で、そうした生活をせざるを得なくなった自分自身の人生を、そして夢も希望もない将来を憂い、悲嘆にくれた者も多かっただろう。

おそらく私は、山谷という街にしみ込んだ多くの労働者たちの汗や涙の重さに押し潰されてしまったのだ。興味本位でここに来た私を山谷は受け入れてはくれなかったのである。

記事/快活60還暦記者:清水一利

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