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2018.02.04

【還暦放浪記】ホームレス受難編

こんな生活を続けていれば、いつか必ずあるだろうなと思っていたことが現実になった。覚悟はしていたが、いざとなるとやっぱり緊張するものだなあ。

深夜2時、ネットカフェで寝ようと白金高輪から田町に向かっていた時、音もなく忍者のように近づいてきた警察官にいきなり職務質問されたのである。

「ちょっとよろしいですか?」

23、4歳くらいの若い警察官だ。この辺りだとおそらく高輪署の勤務だろう。

「お仕事のお帰りですか? お疲れさまです。これからご自宅にお戻りですか?」

言葉はいたって丁寧だが、有無をいわさず質問を畳みかけてくる。にこやかな表情だが、目は少しも笑っていない。私の表情のちょっとした変化も見逃すまいとしているのだろう。

もちろん私は何一つ悪いことはしていないし、職質されて困るようなものも持っていない。それでも、こうして制服姿の警察官と対峙するとどうしても身構えてしまう。

「いえ、自宅ではなく田町のネットカフェに行こうかと思って」

正直に答える私。

(ホームレスになったいきさつを話さなければならなくなったら面倒くさいな)

と思っていると、

「そうですか、それにしても大きな荷物ですね。失礼ですが、何が入っているのですか?

と聞いてきた。

そうか、やっぱりそこを突いてきたか。それが気になったから声をかけてきたのだろう。

「パソコンとか資料とか仕事に必要なものですよ

「お仕事は何をなさっているのですか?」

著述業です。本を書いています」

「ほう、作家先生ですか

「そんなすごいもんではありません。ただの物書きです」

「申し訳ありませんが、免許証をお持ちでしたら拝見できませんか?」

話しているうちに最初の緊張感がやっとほぐれた私は、せっかくの事なので、職務質問でのコトの成り行きを最後まで見たくなってしまった。リュックから免許証を取り出し、警察官に渡しながら、

「やっぱり私のことを怪しいと思って声をかけたわけですか?」

「いえ、決してそういうつもりではありませんが、ただ、大きな荷物をお持ちでしたので、それが目につきまして」

「だから、中に何かヤバいものが入っているんじゃないかと思ったんでしょう?」

「いえ、そういうわけでは……」

「危ない薬も白い粉もワイセツなDVDも、何にも入っていませんよ。疑うなら見てみますか?」

「いいえ、大丈夫です」

「大丈夫って、それじゃあ私に声をかけた意味がないじゃないですか。いいですよ、リュック開けますよ」

「いえ、そこまでしていただかなくて結構です。本官は決してそういうつもりではありませんでしたから」

そうか、警察官は自分のことをいう時、本官というのか。知らなかったな。

「でも、私もこんな夜中に呼び止められて、何もなしで終わりじゃ格好つかないんですよね。だから、ちゃんとリュックの中を見てください。もしかしたら覚醒剤か大麻が入っているかもしれませんよ」

とさらにしつこく食い下がること30分。次第にしどろもどろになってきた若い警察官が可哀そうになったので、この辺で解放してあげることにした。

ホームレスになれば、普通では味わえないこんなスリリングな体験もできるのである。

記事/快活60還暦ホームレス記者:清水一利

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