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2017.12.22

【男の回顧録】あの頃、夢にまで見た憧れの職業

男と生まれたからには死ぬまでに一度はやってみたいと誰もが憧れる仕事がある。

「オーケストラの指揮者」「連合艦隊の司令長官」「プロ野球の監督」などがそれだ。

たしかに、どれも何人もの人間を自分の意のままに操れる、やりがいのある仕事といえるだろう。

そして、筆者にはもう一つ、男としてどうしてもやりたいことがある。

「銭湯の番台に座る」ことだ

何と小さなことをいっているのかとバカにすることなかれ。

男なら誰だって一度は銭湯の番台に座ることを夢見たはずだ(と思う)。

昔の銭湯には必ず男湯と女湯の境のところに番台があった。入浴料金を受け取ったり、男(女)が女湯(男湯)に入り込まないように見張ったり、浴室で貧血を起こして倒れるなど何かトラブルが起きた時、すぐに駆けつけるというのが番台の主な仕事だ。

きわめて重要な役目を担っているのである。

番台は一段高い造りになっている。だから、そこに座れば当然のことながら男湯も女湯も丸見えだ。女性客の着替えの様子や入浴中のしぐさをまさに手に取るように見ることができる。

近所のお嬢さんが裸になると意外といいプロポーションの持ち主だということもしっかり分かってしまうのである。

女湯の盗撮ビデオなど世の中になかった時代である。番台に座っている銭湯のオヤジを、心の底から羨ましいと思い、一度でいいから代わってほしいと願ったものである。

そして、番台に座ることができないのなら、せめて少しでも覗いてやろうと入浴料をわざと1万円札で支払って、オヤジがお釣りを用意している間に背伸びをして女湯を覗いたものだった。

おそらく、それは筆者だけの思い出ではない。健全な心を持った男子ならば、誰もがやったはずだ(と思う)。

ところが、平成になって、そんな番台が銭湯から姿を消してしまった。

今あるほとんどの銭湯が入り口に設けられた受付(カウンター)で料金を支払うシステムとなったからである。

番台がなくなったのは、女性客、特に若い客は男性が番台に座っていることに抵抗があり、結果として客足が遠のいてしまうことを恐れた銭湯側が、自ら番台をなくしたというのが最も大きな理由だろう。

入浴中の姿を見られることはプライバシーの侵害だという声が大きくなったこともある。

いずれにせよ、世の中の流れは銭湯から番台を排除してしまった。何とも惜しいことである。

ところが、まもなく平成が終わろうという今でも、古き良き番台がしっかり残っている銭湯が都内だけでも金町湯(葛飾区)、良の湯(墨田区)、雲翠湯(荒川区)、山の湯(豊島区)など下町を中心にいくつかある。

悲しいことではあるが、番台はシニアの髪の毛のように、これから先細ることはあっても増えることは絶対にない。懐かしい香りがする番台のある銭湯。今のうちに改めて体験しておきたいものである。

取材/快活60還暦記者:清水一利