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2017.11.03

【シニアの酒場】長寿の酒は墓場のそばの居酒屋にあり

「編集長は、またいつものようにウーロンハイでいいっすよね」

最近、部下と飲みに行くと席に座るやいなや、開口一番に言われるセリフである。
別にウーロンハイに罪はないし、酒の嗜好は個人の自由だ。誰に文句を言われる筋合いもない。
だが、どうにも感じが悪い。
「いつもウーロンハイしか飲まない酒の味のわからないおっさん」
こう言われているような気がする。そんな風に聞こえるのは、年をとってひがみっぽくなったから? いや違う。30代、40代の時はそんな風に言われることはなかった。
明らかに年寄り扱いされているのである。

「はいはい、おじいちゃんは薄めのウーロンハイにしておきなさいね」
こう言われているのである。
なんかむかつく。
むかつきながら飲むから、薄めのウーロンハイでも悪酔いをする。これではせっかくの「百薬の長」も毒にしかならない。
極め付けは女性スタッフのこの一言だ。

「なんかウーロンハイ飲んでるオジさんって、仕事ができない課長っぽく見えますね」
課長は立派な役職だから、そこには異論がない。「仕事ができない」課長というのが心外だ。
繰り返すがウーロンハイには全く罪はない。若い人が飲めば、こんなことを言われることはないだろう。

要するに部下やスタッフの女性たちは、違いがわかるはずのシルバー世代の私が、出版社の編集長であるにもかかわらず、毎度毎度、何の工夫もない酒を飲んでいることをバカにしているのだ(彼らは否定するかもしれないが、私にはどうにもこうにもそのように感じる)。
おそらくこれが、レモンサワーや生グレープフルーツサワーでも同じことを言われ、逆にマティーニあたりのカクテルなんかで洒落こむと、気持ちが悪いと陰口を叩かれるのだろう。
一体、何を飲めば、それらしく見えるというのか。
それに加えて、最近はシニア世代が気軽に入れて、なおかつ落ち着ける店が異常に少なくなったような気がする。

人気店で混雑しているのは仕方がないが、問題は客層だ。店内で一気飲みをしている集団がいるのも落ち着かないが、問題は怒声だ。野良犬のように喧嘩している客がいると全く酔えないし、万が一からまれたら自分が何をしに来たかわからなくなる。
楽しむために酒場に来て、寿命が縮んだら元も子もないのだ。

では、我々シニアは、どんな店で、どんな酒を楽しめば、ゆったり静かな時間を享受でき、周囲から「違いのわかる男」と言われるのだろうか。
最近、そのヒントになる店を見つけた。
新宿駅から西に向かって徒歩5分ほどの墓場の隣にある居酒屋「ふるさと」がそれだ。


墓場の隣にあるというと「えっ? そうなの?」と怪訝な顔をするムキもいるが、シニア層にとっては逆にそれが好都合なのだ。老い先が短くなって、アッチの世界に近いからではない。墓場の近くに来ると、不思議なことに人は皆、静かで落ち着いた気持ちになるからだ。

仏壇の前で怒声をあげたりする者は滅多にいない。普段は生意気しか言わないチャラい部下でもしおらしくなる。それがいい。
会話も下品にならない。ご先祖様や墓の住人に見られているような気分になるからだ。自然と人の悪口も言わなくなる。
そうなると次は酒だ。ここにはウーロンハイを飲んでいても、「あいつは仕事ができない課長なんじゃないか」と怪しむ輩もいない。

でも、せっかくの雰囲気だ。墓の近くなので、洋酒ではなく日本酒を楽しみたいところ。
実際、この店は店長が日本酒好きで、厳選された各地の日本酒を数多く集めている。その証拠に滅多に手に入らない佐賀の銘酒『鍋島』を10種類も揃えているのだ。


この季節なら冷もいいが、オススメの熱燗で一杯というのもオツだ。
ちなみに前出の「ウーロンハイ=仕事のできない課長」発言をした女性スタッフに日本酒を飲んでいるシニアをどう思うか聞いてみたところ、こんな答えが返ってきた。
「シブい。特に自分のふるさとの酒をしみじみ味わっている老紳士はキュンとくる」
いい感じだ。
あとは「肴」だ。
「ふるさと」という名前だけあって、素材を活かした素朴なつまみが多い。どの料理も懐かしい味がする。若かりし頃、昭和の時代にあった、あの味。そう、お袋の味だ。

しかも、値段が安い。ほとんどが一皿500円前後。ここだけ昭和の物価のようだ。
これなら懐具合を気にせず、存分に酒と肴を楽しめる。
要するにここは近未来都市・新宿にありながら、懐かしい昭和、そしてふるさとを感じることができる店なのだ。
嗚呼、寿命が延びる。
もっと早くこの店を知っておけば、こんなに顔が皺だらけになることもなかったし、ハゲ散らかることもなかっただろう。
高層ビル街の隅でひっそりと営む墓場の横の居酒屋「ふるさと」。そこには、いまはほとんどなくなった懐かしい昭和の雰囲気が残っている。
そこで酒を飲んでいると、もしかしたら、決して会うことができなくなった懐かしい人の幻を見ることができるかもしれない。

 

「呑みや ふるさと」
0353868565
新宿区西新宿7-15-5 SAビル1階
都営大江戸線「新宿西口駅」D5番出口より徒歩3分
JR「新宿駅」西口より徒歩7分
営業時間:11時30分〜14時/17時~23時(11時30分~14時はカフェのみ)
定休日:土・日・祝日
予約可・全席喫煙可

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