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2017.11.02

【特報】これまでの人生が味に出る? 自分で作る焙煎コーヒーの醍醐味

秋は人を感傷的にする季節です。

透き通るように高く青い空、空一面を真っ赤に染めながら落ちてゆく夕日、山々に色づく紅葉、秋風に揺れるススキや落ち葉。

人を感傷的にさせるのは視覚に訴えるものばかりではありません。

街路樹が運ぶ秋特有の木々の香り、図書館の香り、夕刻になると家々から立ち上る食卓の香り。

秋は、人の嗅覚を切なく刺激する独特の懐かしい匂いも持っています。

多くの大人たちが記憶として紡いできた秋の香り。

その中のひとつにコーヒーの香りを思い浮かべる方も少なくないでしょう。

秋の木漏れ日が差す喫茶店での初デート、上司と同行した初めての商談、残業中のデスク、出会い、別れ、喜び、悲しみ…人生の数々のシーンで、コーヒーは、その香りとともに、そっとあなたのそばにいたはずです。

楽しい時には甘く、辛い時には苦く感じたコーヒー。

多くの人生経験をしてきた大人の男にとって、コーヒーの味わいは人生の味わいそのものと言っても過言ではありません。

そんな自分の人生の味をコーヒーを通して楽しめる店が東京・新橋にあります。

オープンして1年。店の名は『ぼくらの焙煎工房』。

このお店の特徴は、自分で生豆を焼いて自分だけのコーヒーを作れること

コーヒーの挽き方や淹れ方について学べるところは数多くありますが、豆の「焙煎」(焼き方)を教えてくれる場所は、日本ではココだけかもしれません。

しかも、焙煎は実際にプロが使用している焙煎機を使う本格的なもの。非常に貴重なもので、一般の人が触れる機会は滅多にありません。それだけでも体験する価値があります。

どんな人がお店に来るのか、店長の山口さんにお伺いしました。

「将来、カフェをオープンしたいからという方も、もちろんいらっしゃいますが、一般の方もたくさんいらっしゃいます。

当店の場合、事前に用意するものは一切、ありません。それこそ会社帰りに手ぶらで気軽に立ち寄っていただくことができます。

実際、新橋にお勤めのサラリーマンやOLさん、ご近所にお住いのご夫婦など、様々な方がいらっしゃってますよ」

ちなみに『ぼくらの焙煎工房』が居所を置く新橋は、コーヒーメーカー各社の本社があり、コーヒー教室も多い場所。いわゆる知る人ぞ知る「コーヒーの聖地」とも言える街。自然とコーヒー好きやコーヒー通が集まります。

「コーヒーに薀蓄がなくても全く問題ございません。大事なのは薀蓄よりもコーヒーに触れて楽しんでいただくこと。興味がある方は誰でも自由に参加していただけます」(山口さん)

早速、ほとんどコーヒーの知識がない記者も焙煎に挑戦することに。

まず最初に行うのが「生豆選び」。

産地で選ぶもよし。名前で選ぶもよしですが記者は、珍しいという理由で、台湾の「阿里山」という豆を選択しました。

ここで生まれて初めてコーヒーの「生豆」を拝見。

なんと、やや緑色です。

しかもどの豆も心なしか、私が知っているコーヒー豆より粒が小さいような気がします。

山口さんによると、実はこれが焙煎する前のコーヒーの生豆で、ローストすることで、膨らみ、黒く光沢が出て、ご存知のコーヒー豆になるということ。

(写真注:焼き時間が長くなるにつれ大きく黒く光沢を増していく)

 

まずは、欠けたり壊れたりしている豆を取り除きます。

記者が選んだ「阿里山」はとても上質な豆のため、ほとんどダメな豆がないとのこと。

豆のチェックが終わったら、いよいよ焙煎です。

焙煎するにあたっては焙煎記録表を手元に置きながら進めます。

今回、記者は500グラムの阿里山豆を「深め」にローストすることに決定

山口さんの指示に従って、直火の焙煎機を使うことになりました。

(写真注:赤いほうが「直火用」焙煎機)

ちなみに焙煎の方法は使用する焙煎機に寄って異なります。

大きく分けると「直火」と「熱風」がありますが、シリンダーに火を当てて間接的に焼く「熱風」のほうが、まろやかな味になるということです。

また、どれぐらいの時間焼くかによって同じ豆でも味が変わります。

一般的に浅い(焼く時間が短い)と酸味が強く、深く(焼く時間が長い)なるほど、コクと深みが増していきます。どっちにするかは個人のお好みです。

これまで、薄っぺらい人生を歩んできた記者としては、コーヒーだけは深みをコクを出したいところ。

臆面もなく、山口さんにできるだけ長い時間、焼きたい旨を打診しました。

しかしながら、初心者の場合はあまり焼きすぎてしまうと焦げて、飲むに耐えられない味になってしまうことが多いとのこと。

飲めなくなっては元も子もないので、「やや深めの味わい」に鞍替えすることに。

焼き方が決まったら、山口さんの指示に従いながらのロースト開始です。

まずは釜の温度を200度程度まで加熱します。

目標温度に到達したら、一旦加熱を停止。140度位まで落ちるのを待ちます。

140度になったのを確認して釜の中に豆を投入。再び火を点けロースト開始です。

1分ごとにこまめに温度をチェックしながら丁寧にローストしていきます。

一見、単純な作業のようですが、ちょっとでも頭をお留守にすると、その後の豆の成長に多大な影響を及ぼすとのこと。まったく気を抜けません。

10分を経過した頃。突然、釜の中から「パン」というただならぬ音が。何か大変なヘマをしたのかと、記者が慌てふためいていると、山口さんより「豆がハゼた音」とのレクチャー。

大事に至らず一安心です。

ちなみに「やや深め」の場合、この「ハゼ」を2回聞けばローストは終了とのことです。

それから約4分後、2回目のハゼが聞こえ、釜の火を消します。すでに室内にはコーヒーの何とも言えない良い香りが充満しており、豆が釜の中でどんな具合に成長したのか期待感が増します。

そしてついに我が子のように手塩にかけて育てた豆とご対面!

わずか15分足らずではありますが、どうですか、私が育てた豆は!この立派な黒光り具合は!

これならどこに出しても恥ずかしくありません。

(写真注:膨張して最初に生豆を入れたカップから溢れています)

ローストした豆は、その場で挽いて味わうもよし。持ち帰って自分一人で楽しむもよしです。

ちなみに山口さんによると、実は焼きたての豆をすぐに飲むことはあまりお勧めしていないとのこと。本来は2日後、3日後、そして1週間後に変わっていく味わいを比べるのが楽しいそうです。

「確かに焙煎したての豆を飲むのはセオリーではありませんが、味はともかく、お客様は皆さん、ここでのコミュニティが楽しいとおっしゃいます。焙煎は成功もさることながら失敗もまた楽しいんです。どちらにしても会話に花が咲きますね」(山口さん)

焙煎には、その人生の味わいが出るといいます。失敗も成功も大切な自分の人生のひとつ。隣り合わせた人と、焙煎したコーヒーを通して、人生を重ねあう。これもひとつの「出会い」の形ではないでしょうか。

皆さんも「世界でひとつだけの自分と生き写しのコーヒー」を作ってみませんか。

 

取材協力:ぼくらの焙煎工房

問い合わせ:09032218223

アクセス:東京都港区新橋1丁目16-9 亀田ビル2階

営業時間:予約制/土日も可能(お電話にてお問い合わせください)

ホームページ:http://coffee-koubou.com