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2019.04.07

【シニアの悲劇】ノートパソコンを開けてみたら

かの江戸川乱歩は小説を執筆する際、書斎をわざわざおどろおどろしい雰囲気にしていたと言われています。

そんな空間から『人間椅子』や『陰獣』などの名作が生まれていたのですから執筆環境というものは、とても重要だということができます。

私は作家ではありませんが、同じく文筆業の末端を営む者です。同業の編集者の中には、私のことを「お前の場合は文筆業じゃなくて分泌業だよ」などと揶揄する心無い輩もいますが、文字を紡いで皆様に発表している以上、乱歩と同じく執筆環境はとても重要なのです。

ということで私は風俗の原稿や人妻の記事を書くときには部屋に立てこもりエロ本を床いっぱいに敷き詰めて全裸入稿を敢行しております。ゆえに私の執筆姿は「ツルの恩返し」以上に決して人に見られてはならないのです。

以前、深夜だから大丈夫だろうと高を括り、会社でソレを実行しようとして危うく刑務所送りになるところでした。

私にとって執筆活動は恩返しのツルや江戸川乱歩以上に危険な任務なのです。

その任務は木曜日の深夜から金曜日の朝にかけて行われます。

これまでの私の人生の統計を取ると木曜日が一番、他人からの関心が薄れることがわかったからです。

だから毎週木曜日は酒の誘いなど一切の誘惑を断り、夕方の早い時間から全裸入稿の準備に取り掛かります。

定時である17時半のチャイムがなるやいなや、脱兎のごとく会社を飛び出し、家に帰って飯も食わずに眠ります。

そして草木も眠る丑三つ時に蠢きだすのです。

もしかしたら会社の同僚の中には木曜日だけ様子のおかしい私に気づいている社員もいるかもしれませんが、想像力が希薄で無知蒙昧な我が社の者どもは、よもや私が全裸入稿のために定時帰宅をしているとは夢にも思わないでしょう。

しかし先日、20年以上も人知れず続けてきた全裸入稿が白日の下に晒される危機が訪れたのです。

事件は全裸入稿あけの金曜日、あるメーカーの新商品取材に行った折に勃発しました。

私はいつものように取材4点セット(カメラ、ノートパソコン、ICレコーダー、そして老眼鏡)をリュックに詰め現場に赴きました。さすがに大手企業の新商品発表会だけあって、会場には多くのマスコミが詰め掛けています。ようやく前のほうの座席をキープしましたが、隣同士がぴったりとくっついた状態。狭いスペースではありましたが、私はカメラ、ノートパソコン、ICレコーダーを机に並べ、取材の準備を始めました。

するとどうでしょう。どんなにリュックの中身を確認しても老眼鏡がありません。どうやら家に忘れてきたようです。いつものメガネのままでは近くのものが見えませんが、もはや手遅れ。この状態で取材をするしかありません。

パソコンを開くと何やらキーボードがひどく汚れています。いや、見えないゆえに汚れているように感じたのです。

そこで、埃を払うために「ふぅーっ」と軽く息を吹きかけてみました。

すると、画面に邪魔された埃たちは、こともあろうに全部、両隣に舞い散っていったのであります。

少し距離が離れると老眼の私でも埃の正体がわかります。私はその埃たちの姿を見て思わず脱糞寸前に陥ってしまいました。

なんと、埃たちはすべて「陰毛」だったのです。

ヒーーーーーッ! ナンマンダブ、ナンマンダブ。

念仏を唱えたものの、時すでに遅し。しかも運が悪いことに両隣ともにうら若い乙女ではありませんか。おそらくどこかしらの女性誌の編集者でしょう。

ギャオス!

私は思わず、珍妙な悲鳴をあげてしまいました。タマキンを弄りながらキーボードを操っていた祟りがこんなところでふりかかってくるとは思いもよりませんでした。

いや、災難なのはむしろ嫁入り前の娘たちのほうでしょう。見ず知らずのオッサンの隠毛が、まさか神聖な発表会の会場ふりかかってくるとは夢にも思わなかったはずです。

これは一歩間違えれば大事件に発展する可能性もあります。もしかしたら、うっかり私の隠毛をつまみ上げて金切り声をあげるかもしれません。そうなったら企業の新商品発表会は、予定を変更して私の陰毛事件記者発表会になるでしょう。絶体絶命とはまさにこのとです。いつクソが漏れてもおかしくありません。いや、むしろこの場でクソを漏らしたら陰毛の件はチャラになるかもしれません。大は小を兼ねますから。いやいや、クソなんて漏らしたら、それこそ会場そのものが壊滅します。ここはひとつ、小便でも漏らしておきましょうか。

天を仰いで神や仏やキリスト様に懇願しながら神をも恐れぬ後始末をアレコレ考えていた私ですが、次の瞬間、腰が抜けるほど驚いてしまいした。

なぜなら娘たちが顔色ひとつ変えずに私の陰毛を吹き返してきたのです。

マイガッ!

新約聖書マタイの福音書第22章「カエサルのものはカエサルに」改め「ジジイの陰毛はジジイに」です。両隣の娘たちは、たかだか陰毛ごときで騒ぎ立てるようなタマではなかったのです。さすが編集者。もしかしたらこの娘たちも全裸入稿派かもしれません。ともあれ今回はどうやらキリスト様が助けてくれたようです。

神のご加護をいただいた私がそれ以来、全裸入稿を封印したのは言うまでもありません。

文責:編集長原田