佐々木正洋のいまさら聞けない一般常識 ベテランアナがやさしく解説

2020.02.03

第82回「オヤジの愚痴」

こういうものを書こうとするとき決まって筆者は『自分は違う』と思いたいものです。

しかし「他人(ひと)の振り見て我が振り直す」という格言が自分に当てはまるとすれば、それは、ややもすると軽蔑したくなる人格の持ち主とさしてかわらないということですよね。それを踏まえて書くことにします。

もう、参っちゃいました。銀座の一画に構えた一流!?の和風料理屋さん、「お飲み物は何になさいますか」の問いにいつものように「ドラフトを」と答えると「ドラフト?」と若いお兄さんが語尾をあげて怪訝そうな表情になっていました。

『あ~、わかってないんだな』と思った僕は『生ビールは何があるかな』と言い直してあげました。『そうそう、カッカせずにいいねぇ』と自分を褒めかけたんです。

次の場面「ビールはこちらです」とお酒のメニューを広げてくれました。そのメニューを見た途端、また『ナヌッッ!』と思ってしまいました。

そのメニューのビールの欄を見るとエビスビールしか載っていませんでした。きっとその日初めてお店に出たのかもしれません。そう言えばグラスを運んできた手が震えていました、と一緒に入った男性が言っていました。

仕方ないですね。でも昔だったらきっとその一連の流れは許されませんね、やっぱり銀座ですから。その日そのお店に入ったのは、僕と縁あって長い付き合いをしている僕の半分くらいの年齢の男性が僕の為に選んでくれたお店でした。だから彼に恥をかかせるわけにはいきません。グッと我慢することにしました。今思えば自分自身「そんなことでカッカするなよ」とも思いますけどね。そのお店、途中からその店の店長らしき人が応対してくれていました。

昔から、一流店ほど、お店の人は客を見て接待の仕方を変えると言いますが、今の時代、客も応対する店員に合わせて言葉を選ぶ時代のようですね。因みに料理は美味しかったと思います。このあたり結構僕もイヤな奴ですね。

こんなこともありました。

数か月前まではなかなか予約も取れなかった台湾料理の店です。ところがその日に限ってなのかどうかわかりませんが、夜の7時の段階でお店の半分くらいしか席が埋まっていませんでした。やっぱり、そういうことか、と僕は思っちゃいました。

というのもそのお店、僕は行くのが初めてで、お店に電話しました。方向音痴なものでアクセスの地図を見てもわからないことが多いからなんですね。そしたら電話の向こうから聞こえてきた声がキレイな若い女性の声。すでにこの時嫌な予感はあったのですが。「そこのお店に近い駅はどこですか?」と聞くと案の定「ああ、日比谷線です」と返ってきました(あとでわかったのですが路線も実は総武線でした・・・)。僕は面喰いながらも「いや、あのう、駅の名前を教えてもらえます?」というと「あ~あ、新日本橋です」と答えてくれました。少しほっとして、そこで訊くのをやめておけばよかったのですが「駅を出てどっちに行けばいい?」とつい続けて訊いてしまいました。今度は自信をもって「直結してます」との答え。もう、こっちはお店に辿り着く自信がなくなっちゃいました。

それでもようやく新日本橋の駅に到着しました。どこで直結しているのかやっぱりわかりません。またお店に電話しました。今度はおじさんの声です。ちょっと安心して「何番出口ですか」と訊くとまさかの「ちょっと待って下さい」との返事。挙句の果てに「調べてこちらから掛け直しますから」。人間が出来ていない僕は我慢の限界でした。「何番出口かぐらいわかるでしょ」と言ってしまいました。でもその時「済みません、すぐ調べます」と申し訳なさそうにそのおじさんが電話で謝ってきたものだから「あっ、いけない」と思えました。その時の自分の心の動きを追うと“ありがとう”“ごめんなさい”というのは大事だということを痛感します。その一言で単純な僕は機嫌が直っちゃいました。

他にもあります、居酒屋でも何でも「今日の一品って書いてあるけどこれ、ナニ?」って訊いて、「ちょっと待ってください」と言われた日にゃあ、二度とその店には行きませんね。どれだけキレイなお姉さんがいても、です。オヤジをなめてもらっては困りますよね。そういうことが目的のお店じゃないからです。お店の雰囲気、接待の仕方、そして料理の味、それに見合った値段、これらが調和して初めてお店は繁盛します。お客さんは正直ですからね。

でも、「他人(ひと)の振り見て我が振り直す」ですよね。ジャンルは違ってもわかっているようでわかっていないですからね。食べることじゃなくても、喋ることでも同じことです。くわばら、くわばら・・・。

    佐々木 正洋
    佐々木 正洋
    1977年アナウンサーとしてテレビ朝日入社。16年間担当「夕刊キャッチアップ」の最高視聴率16%は今だ破られず。また、2002年出版の「ちょっとしたコツで誰でも『上手な話し方』が身につく」は、当時現役局アナとして近年初1万部を突破。猪木の闘魂ビンタの元祖。2012年独立。テレビ、ラジオで活躍の他、各種イベントの司会や講演を行い、「雑誌ネット」で記事批評を載せ、駒沢女子大学で講師を務める。インターネット、新聞などで世相を斬る、コラムニストでもある。北九州市観光大使