佐々木正洋のいまさら聞けない一般常識 ベテランアナがやさしく解説

2019.12.23

第77回「あじフライについての考察」

川崎市の新百合ヶ丘駅から歩いて15分くらいの、閑静な高級住宅街の入り口付近にあじフライの美味しい店があります。

昔は道路を挟んで向かい側のレンガ造りのお店で、ハムやソーセージを売っていたんですが、今はそこはやっていません。そして、肉類と揚げ物をメインに売っている「Haus Metzger HATA(ハウスメッツガー ハタ)」というお店になっています。

揚げ物ではハムカツが売りになっていて、ハムカツという文字が躍っているのぼりが何本も立っています。ドイツ語の名前を冠したお店、メッツガーというのはそれまでなじみがなかった言葉でしたが、ドイツ語で「肉屋」という意味だそうです。店内に入ると食欲がそそられるような揚げ物の匂いとガラスケース越しに豪快なハムの塊や大きなソーセージが所狭しと陳列してあります。揚げ物はお店で次々に揚げていて、揚げている音も心地良いですよね。ハムカツ、あじフライ、コロッケ、クリームコロッケ、から揚げなどが早い者勝ちで売れています。

その雰囲気だけでも美味しそうなのですが、実際、どの揚げ物も美味しいんですね。確かにどこのお肉屋さんでも、売られている揚げ物はそうアタリハズレはないですが、あじフライというのはお肉屋さんで売られていましたっけ⁉ まぁ、それは置いといて、とにかくこれが格別にウマいんですね。高島屋の地下で買い求めたあじフライよりも近くのスーパーのサミットで売られているあじフライよりはるかにウマいんです。

なぜそんなにウマいのか、まず肉厚なんですね。お肉屋さんだから魚も肉厚なのが似合うと考えているのか、そこは聞いたことがないのでわかりませんが。そして揚げている油がいい。安っぽくないんですね。あくまでカラっと揚がっているんですが、ボリューム感があってサクッと食べた時の歯ごたえが違います。タルタルソースがまた合うんですね。

こんなに美味しいのに、でも時々、ちょっとひっかかるんですね。何がひっかかるか、それも判然としないんです。そうか、と判るまで半年かかりました。

そうなんです、かけてみましたが、醤油が似合わないんです。さらに言うと辛子も必要ないんですね。これはもう、いわゆるニッポンのあじフライではないんですね。やっぱりドイツ語の名前のお店で売られている、サクッとしていても、ちょっとこってり感のある、食べ応えのあるあじフライなんですね。高級住宅街の入り口で売られるにふさわしいあじフライなのかもしれません。値段もひとつ220円もします。税込みだと237円です。はっきり言って“高い”です。サミットで買うとせいぜい150円だったと記憶しています。ただし一枚のあじフライの大きさも肉の厚みも油も違います。ドイツ風あじフライ!?(ドイツであじフライは見たことがないですが)よりもペラッとしていて、揚げると少しめくれ感があるようです。でもこちらは、醤油が合います。辛子も似合います。油も違っていてちょっとヘナッとしているかもしれません。それはオーブントースターでなんとかなります。実はニッポンのあじフライのイメージはこっちだったんですね。

で、下町のお店でおばあちゃんが出てきてわずかに油がしみ出るような白い紙袋に無造作に放り込んで売られているのが、日本にしかない、いい意味で安っぽい⁉“真のあじフライ”なのかもしれません。ひっかかっていた理由がわかってスッキリしましたが、じゃあ、サミットのあじフライに行くか、というとそう単純なものじゃあないんですね。

「グーテンモ―ゲン」と言いながら、ハタのあじフライを2回食べたら、1回はサミットで買ったあじフライに醤油をかけて食べるのが一番贅沢のような気がします。ああ、もうひとつ違いがありました。お昼に食べるのなら、サミットのあじフライ、夜食べるのならハタのあじフライと言えるかもしれませんね。

    佐々木 正洋
    佐々木 正洋
    1977年アナウンサーとしてテレビ朝日入社。16年間担当「夕刊キャッチアップ」の最高視聴率16%は今だ破られず。また、2002年出版の「ちょっとしたコツで誰でも『上手な話し方』が身につく」は、当時現役局アナとして近年初1万部を突破。猪木の闘魂ビンタの元祖。2012年独立。テレビ、ラジオで活躍の他、各種イベントの司会や講演を行い、「雑誌ネット」で記事批評を載せ、駒沢女子大学で講師を務める。インターネット、新聞などで世相を斬る、コラムニストでもある。北九州市観光大使