佐々木正洋のいまさら聞けない一般常識 ベテランアナがやさしく解説

2019.12.16

第76回「今年の新語・流行語大賞に思うこと」

「流行語大賞」という言葉は忘れなくても、その年の流行語大賞ってなんだったっけ、という風に直ぐに忘れちゃいますよね。それもそのはずで、あくまで「流行語」ですから。

それでも65歳以上の人ならば「ガチョーン!」なんて言葉は忘れていないですよね。これはクレージーキャッツの谷啓さんが流行らせた言葉でした、そしてクレージーキャッツと言えば植木等さん、彼の歌の文句が流行語になっちゃっいました。

「てなこと言われて、その気になって・・・」、「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ!」なんてのもありました。彼を称して“日本一の無責任男”などと言ったものです。

ネットで調べたところ「ガチョーン」は1963年に流行ったギャグだそうです。昭和38年、かの東京オリンピックの前の年ですね。若いニッポンがイケイケだった頃です。今から56年前、半世紀以上前の流行語です。不思議ですね。その頃のギャグや流行語は覚えているのに、去年、一昨年の流行語はと訊かれると答えに窮してしまいます。昔のことは脳のしわに深く刻まれているからなんですかね? 大橋巨泉さんの「ハッパフミフミ」なんて意味のない、でも雰囲気のあるどうでもいい言葉も65歳以上で知らない人はいません。手軽に見ることが出来るのが当時テレビだけだったからなのかもしれませんね。

現代の流行語ってどれくらい今の若い人達に浸透しているんでしょうか?

今年流行語大賞に選ばれた「ONE TEAM」もいい言葉です、立派な言葉です。

でも僕が教えている女子大の学生は、この言葉が流行語大賞に選ばれたことを8割かた知りませんでした。

なぜでしょう?

テレビを見ない、新聞を読まないからでしょうか?

我々の世代からすると信じられないかもしれませんが、殆どの学生が新聞は読んでいません。映像も活字もネットからです。情報も娯楽もすべて何らかのアプリから得られています。おしゃべりや情報もSNSからで、そうなるとテレビは必要なくなりますよね。事実、「視聴率を競う」というのは今でもテレビ局の間では重要なことですが、以前のような視聴率戦争などというほどではないですね。

そうなるといたずらに世の中を刺激するより無難な言葉、ゆる~い言葉が出回るようになります。特に一番多くの人の目に触れ耳に入るマスコミであるテレビの場合は、自らが問題を起こすことを最も警戒しますからその傾向は一層強くなります。(流行語大賞そのものはテレビ局が主宰するものではありませんがテレビの影響で言葉が決まることが殆どです。)

事実、2018年にしても大賞を取ったのは、カーリング娘たちの「そだねー」でした。今年もまたベストテンに上がったのは「タピる」「〇〇ペイ」「スマイリングシンデレラ/しぶこ」などです。同じ流行語でも角張ったところのない無色透明安全地帯のような言葉です。だから一年経つとみんな忘れているのかもしれません。「闇営業」というのが今年の流行語大賞ベストテンでは結構、きつい言葉でしたが、これは一種芸能界にあっては事件のようなもので、いわゆる流行語というのとは本来は一線を画しています。「免許返納」も高齢化社会を反映しての言葉、同種です。

その中にあって「ONE TEAM」はまさに逆の意味で、時代を象徴しています。流行語というよりも時代の要請から生まれたような言葉ですね。ラグビーが平和過ぎるニッポンにあってひとつにまとまる感動を与えました。その組織全員がひとつの目標に向かってまとまって心身を鍛える、なんてことは今の日本にあって皆無です。だから新鮮だったし、そんな言葉、行為に日本人が飢えていたんですね。

若い人達だってホントはスマホばかりいじっていたくないんだと思いますよ。でもおじいちゃん、おばあちゃんがスマホ、アプリ、SNSって言うとそっぽを向くから、会話がなくなっていくんでしょうねぇ。それでなくても年齢が離れているとジェネレーションギャップがあって、なかなか会話が弾まないですよね。ですから、お互いの距離を縮めるツールとしてインターネットを利用してはどうでしょうか? 何かを調べて欲しい、という時は、積極的に僕らから若い人に話しかけましょう。彼らは喜んで調べてくれますよ。歩み寄る、ことが親しくなる一歩です。そして親しくなることが小っちゃくて大きな「ONE TEAM」が生まれる一歩になりますよね。

    佐々木 正洋
    佐々木 正洋
    1977年アナウンサーとしてテレビ朝日入社。16年間担当「夕刊キャッチアップ」の最高視聴率16%は今だ破られず。また、2002年出版の「ちょっとしたコツで誰でも『上手な話し方』が身につく」は、当時現役局アナとして近年初1万部を突破。猪木の闘魂ビンタの元祖。2012年独立。テレビ、ラジオで活躍の他、各種イベントの司会や講演を行い、「雑誌ネット」で記事批評を載せ、駒沢女子大学で講師を務める。インターネット、新聞などで世相を斬る、コラムニストでもある。北九州市観光大使