佐々木正洋のいまさら聞けない一般常識 ベテランアナがやさしく解説

2019.09.16

第65回「“忘却”とは幸せへの道しるべ!?」

最近、物忘れがひどくなってきているように感じています。

つい今しがた、手にしていたものがどこに行ったかわからない、近くのスーパーでの買い物を頼まれて4つ5つ頼まれると大抵最後のひとつは何だったかハタと足が止まってしまう、それも同じボディシャンプーでも容器の色違いで、何の香りのものかとなると、もうアウト!ですね。

最近では妻がそこまで説明するので、困らないと言えば困らないのですが、そこまでわかっているのなら自分でいけばいいのにと毎回思ってしまいます。なぜかわからないですが、それはしないんですね、ブツブツ…。

以前何度か行った場所に地下鉄でまたしても行く場合、出口がA1だったかB1だったか皆目見当がつかない。そしてこういうことを書いていてもっと深刻な物忘れを経験しているのにも関わらずそれが思い出せない、そんな按配で、そういう自分に腹が立つこともしばしばあります。まだまだ大丈夫と周りは言ってくれますが、そうでもないことは自分で薄々感じますね。ボケてくるのも時間の問題かもしれません。

こう言うと、いかにも深刻に悩んでいるようですが、これが意外にそれほど深刻なわけではありません。先ほどもいわゆるボケの種類はどんなものがあるかネットで検索していたらいきなりNHK出版の「みんなの趣味の園芸」という項目にぶち当たってしまったんですね。

そうなんです、植物の“ボケ”の種類について書いてあるところが出てきてしまったんですね。

こちらの目的意図からすると、まさにパソコンの方が「ボケ」てるわけなんですが、パソコンごときはこちらの意図するところはお構いなし、ですからね。こんな時もひとりで笑っちゃいます。傍から見ると少し気持ち悪い場面かもしれませんが、本人はPCを内心、「自分よりバカじゃん」なんて勝手に思って楽しんでいますね。

話を本題に戻しましょう。そうなんです、認知症というのも種類があって、①アルツハイマー型認知症 ②レビー小体型認知症 ③脳血管性認知症 ①は昔のことはよく覚えているのに昨日の事やさっきの会話を思い出せない、といった症状が典型的だとか。

お歳を召した方で無表情の人がいますがそれは②の症状にあてはまるということです。年寄りは生気がない、なんて言いますが、これは②の所為の場合もあるんですね。

そして③は体の麻痺や嚥下障害、言語障害などがみられる症状だそうです。(ネット検索:認知症の人への対応と介護のポイント|症状を悪化させないために より)

そして①や②は乱暴に言うと、脳の中にたんぱく質の一種のゴミが溜まることによって生じる病気だそうです。

現在ではそのたんぱく質のゴミを出しにくくする薬も開発されていて、①や②の認知症の発症を遅らせる、或は症状を出にくくする薬も開発されていて、あなたが60歳代ならばちっとも手遅れではなく、そういうものに頼ればいいだけの話だそうです。

僕も今65歳ですが、もう少し、「悔しいな…」と自分自身に対して思う頻度が増して来たらこういうものに頼ろうかなと思っています。

あとは指の運動とか脳の体操ですね。こういうことも心掛けたいですよね。

でも今日はそういうことをここで言いたいのではなく、忘れるということはそんなに辛い事なのかな、と思ったりもするということを言いたいんですね。

「忘却とは忘れ去ることなり。」

これは1952年の菊田一夫原作の大ヒットラジオドラマ「君の名は」の冒頭のナレーションですね。このドラマではこの文句の後に「忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさよ」と続くんでしたよね。「忘れてしまいたい」というほど辛い事を若い時にはイヤでもしっかり覚えているんですね。

ところが歳を取ると否応なしに忘れ去っていくんですね。憎しみも悲しみも忘却の彼方に、といった具合で嬉しかったことだけ覚えている状態になるんですね。そう考えると、確かに周りは大変かもしれませんが、少なくとも本人は、乗り越えるとドンドン楽になっていくのかもしれないですね。

母が現在92歳です。本人は、いつ死んでもいいという割には、結構元気です。昔々、小学校の先生をやっていて学校一悪かったクラスを学校一良くしたという自慢を嬉しそうに度々話します。その中には今問題になっている「いじめ」対策もあります。他の嫌なことは一切忘れて、忘却というのは過去の嫌なことを“洗い流す”作用があるんだなって母を見ていると今は思いますね。

だから「忘却とは幸せへの道しるべ」と一方では言えるのかもしれませんね。周りはそんな呑気なことを言っていられませんけどね。介護するときにそう思えば、少しは気が楽になるってなもんじゃありませんか。

    佐々木 正洋
    佐々木 正洋
    1977年アナウンサーとしてテレビ朝日入社。16年間担当「夕刊キャッチアップ」の最高視聴率16%は今だ破られず。また、2002年出版の「ちょっとしたコツで誰でも『上手な話し方』が身につく」は、当時現役局アナとして近年初1万部を突破。猪木の闘魂ビンタの元祖。2012年独立。テレビ、ラジオで活躍の他、各種イベントの司会や講演を行い、「雑誌ネット」で記事批評を載せ、駒沢女子大学で講師を務める。インターネット、新聞などで世相を斬る、コラムニストでもある。北九州市観光大使