佐々木正洋のいまさら聞けない一般常識 ベテランアナがやさしく解説

2019.09.09

第64回「『天気の子』は清々しい『元気の子』」

気持ちのいい映画でした。

深海誠監督の前作「君の名は。」も観ましたが、評判程、大人も喜ばせたという気持ちには僕はなれませんでした。いい作品だとは思いましたが「きっと僕がもっと若ければ、純愛に酔いしれることができただろうな」と思ったこともまた事実でした。

それに、主人公の男の子が後悔したまま現実に戻るというところも日本人には馴染まなかったのかもしれません。最終的には、好きだった女の子が生きていたということを象徴するようなシーンがあるのですが、それにも彼は、はっきり気づかされることがありませんでした。

でも「天気の子」は違いました。もどかしいシーンも何度かありましたが、最後は力強くハッピーエンドとなるんですね。やっぱりこれでなくちゃ、いけません。

もちろん、雨を降らすことが出来る能力を持った女の子、奇跡を起こす巫女のような陽菜の存在は、現実的にはあり得ません。でもそんなことは問題ではなく、「すべてを捨ててでも逢いたい人がいる」と彼(穂高)が叫び、将来を棒に振ってでも彼女を助けにいくんですね。

「なんだ、単なる青春物語じゃないか」と言う人が必ずいると思います。

でもそれはこの映画を観ればちょっと違うということに気が付くはずです。このアニメ映画の中には、しがない編集プロダクションの社長、須賀という男が登場しますが、その須賀がつぶやきます。

「人間、歳を取ると、大事なものの順番を入れ替えなくなるんだよ」

それは大事なものの順番がわからなくなるのではなく、歳を経て人として順番を入れ替えられなくなる、んですね。今現在の大事な順番は覆せないわけですし。

でも、そんなしがらみがない若い時代は、社会常識、良識にとらわれずに突っ走ることが出来る。制止を振り切って、逢いたい人を救いに行く。救えることにも合点がいって、粋がってやみくもに突っ走るだけでなく自分だけが救える確固たる自信があってそこへ向かう。周りの「友」と言える人達が、警察の邪魔をしてまでも彼を応援するんですね。公務執行妨害ですから後でお縄になることも承知なのですが、そんなことより大事な彼の行動を後押しをするんですね。このシーン辺りになると鑑賞している客全員が穂高の味方になっています。

仕事や人間関係で疲れている人、悩んでいる人、大人の皆さんにこそ観て欲しい映画です。僕はそう思いました。

加えて言うと、主人公役、穂高と陽菜の声の出演者のお二人、これまで僕は知りませんでしたが、醍醐虎汰朗さん、森七菜さん熱演光っていました。とくに穂高役を務めた醍醐虎汰朗さんの陽菜を救い出しにいく声は、台詞の域を超えていました。「イケ、イケ」と一緒に穂高を応援していましたから。

僕の拙文を読んで、「だからどうした、そんな映画観にかないよ、青臭い」という60歳以上の方も多いと思います。でも、もし、少しでも時間があったら

WEB上で「『天気の子』の深すぎる「10」の盲点」https://cinema.ne.jp/recommend/tenkinoko2019080206/#1

というのを読んでみてください。多少ネタバレしてしまいますが、映画を観にかなくても、“感じる”内容になっています。一緒に「元気の子」になりませんか。

    佐々木 正洋
    佐々木 正洋
    1977年アナウンサーとしてテレビ朝日入社。16年間担当「夕刊キャッチアップ」の最高視聴率16%は今だ破られず。また、2002年出版の「ちょっとしたコツで誰でも『上手な話し方』が身につく」は、当時現役局アナとして近年初1万部を突破。猪木の闘魂ビンタの元祖。2012年独立。テレビ、ラジオで活躍の他、各種イベントの司会や講演を行い、「雑誌ネット」で記事批評を載せ、駒沢女子大学で講師を務める。インターネット、新聞などで世相を斬る、コラムニストでもある。北九州市観光大使