佐々木正洋のいまさら聞けない一般常識 ベテランアナがやさしく解説

2019.08.19

第61回「珠玉の言葉」

久々にいい話を聞きました。

国内も、世界もイヤなニュースばかりが闊歩して気が滅入りますね。35人もの方が亡くなった京アニ放火事件、「今日は何の日」は、毎日のようにあれから何年経った 事故、災害報道だらけ、ちょっとした口論で人のこめかみを傘で刺す男、親が子供を虐待する、国民の老後の資金が2000万円足らなかろうが、年金がどうなろうが政治家は知ったこっちゃない、気持ち悪いだけの「表現の不自由展」、韓国の大統領は日本のことを盗人呼ばわり、アメリカも中国も気になるのは自国の利益だけ、香港市民を脅かす中国、核を持ったインドとパキスタンが一触即発の緊張状態、数え上げれば枚挙にいとまがないですね。

そんなダメになってきている世の中で「ああ、まだ大丈夫かもしれない」と思わせてくれたのは小学校1年生の女の子でした。

これは、その女の子のおばあちゃんから聞いた話です。

その女の子の名前を仮に花子ちゃんとしましょう。おじいちゃんの法要で、一家のみんながお寺に集まりました。お坊さんがお経をあげ、一通り法事が終わろうとしていました。滞りなく法事が終わろうとしていた時に、お坊さんが花子ちゃんに突然、「花子ちゃんが一番大切にしているものは、ナニ?」と尋ねたそうです。

「なんて答えるんだろう」

みんな花子ちゃんを見つめました。

そしたら花子ちゃんはちょっとだけ間があって「家族です」と答えたそうです。

お父さんもお母さんもおばあちゃんも、花子ちゃんの妹も、みんなビックリしてそして喜んだそうです。お父さん、お母さんにしてみれば、試験で100点取るより嬉しいことですね。自分たちの教育が正しいことを娘が証明してくれたんですから。

それまで、どちらかというと威厳のある、とっつきにくい顔をしていたお坊さんも、その答えを聞いて相好を崩して喜んだそうです。そしてさらにおばあちゃんが驚いたのはそのお坊さんの言葉。

「ようやくその答えを聞きました。いらっしゃる方皆さんに質問していたのですが、誰一人、その答えをした人はいません、皆さんから出た言葉は『お金とか家』という答えから始まって果ては『ケイタイ、スマホ、ゲーム、コンビニ』というものまでありました」

こう話したそうです。

聞いた相手が子供なら、そういう言葉が返ってくる時代なのですね。

かつて、女の子に一番なりたい職業は、という質問に「キャバクラ嬢」と言う答えがトップになったことがあります。その時、僕は『なんていう時代なんだ』と思ったことがありましたが(こう言うと直ぐに職業に貴賤はないんだ、何が悪いんだ、いいじゃないかという訳のわからない反論が出てくるのが現代ですけどね)、それ以上ですね。

夫婦共働き(今の世の中フーフー共働きと読んでもいいかもしれません)で結局払った社会保険料では年金は足らないと言われ、子供の教育は学校に任せっきり、その学校では先生の児童に対するわいせつ事件が起こったり、いじめが横行したり。子供の逃げ場は『ケイタイ、スマホ、ゲーム、コンビニ』となってくるんですかね。でもその思い、考えは正さないといけません。そういった言葉が子供から出てくるのは世間が悪いからではありません、親の責任です。この「家族」と答えた花子ちゃんの両親だって働いています。とりわけ裕福なご家庭という訳ではないようです。お父さんはサラリーマン、お母さんは看護士さんです。そしておばあちゃんが同居しています。この話を聞いたとき僕はふと思ったのですが、もちろんこういう答えを出すお子さんの親御さんは優しい人の気持ちを大事にする両親だろうなと推測できますが、両親がおばあちゃんを大事にしているんだろうな、と思います。そのおばあちゃんが、猫かわいがりではなく正しく花子ちゃんを可愛がってくれるから、幸せな花子ちゃんは「家族」と答えたのではないのかなと。

当たり前のことですが、素封家だからといって幸せいっぱいになるわけではありません。社会的に地位があるからといって幸せになれるわけではありません。それらは幸せになる方法のひとつにはなりますが、それだけで、心が満たされるのではないですよね。一番大切なものは「命」に決まっている、という人もいるでしょうし、それもまた、正解です。でも、命を紡ぐ、命が喜ばないと人として生きている喜びがないですよね。究極はきっと「愛」ですね。個人も国家も「愛」がいっぱいになるように頑張らないといけません。簡単に手に入るものではありませんから。花子ちゃんの答えは僕にいろいろなことを考えさせてくれました。

麻生さんは「一番大切なものはなんですか?」国民の前で、正直に答えられますか?

    佐々木 正洋
    佐々木 正洋
    1977年アナウンサーとしてテレビ朝日入社。16年間担当「夕刊キャッチアップ」の最高視聴率16%は今だ破られず。また、2002年出版の「ちょっとしたコツで誰でも『上手な話し方』が身につく」は、当時現役局アナとして近年初1万部を突破。猪木の闘魂ビンタの元祖。2012年独立。テレビ、ラジオで活躍の他、各種イベントの司会や講演を行い、「雑誌ネット」で記事批評を載せ、駒沢女子大学で講師を務める。インターネット、新聞などで世相を斬る、コラムニストでもある。北九州市観光大使