佐々木正洋のいまさら聞けない一般常識 ベテランアナがやさしく解説

2019.06.24

第55回「互いの生活をかけてハトとバトルを繰り広げました」

また、ハトがやってきました。僕が住んでいるマンションは6階、角に建っているものだから、三方にベランダがあります。北側、東側、南側です。ハトにしてみるとそのベランダが隠れ家にもってこいのようです。

どのベランダにも姿を現しますが、それぞれの側のベランダを試した結果、東側が彼らにとって一番好都合のようです。東側のベランダにしょっちゅうハトがやってきます。ただ止まり木代わりにやってくるのなら、可愛いものですが、終の棲家と定めたのか、どうも朝方はベランダの隅にうずくまって、ベランダのあちらこちらに糞をまき散らしています。ベランダの左右の隅を好んでいるようですが、特にベランダに出て右側の隅、朝の日差しがわずかに届く程度の場所ですが、そこが殊の外、お気に召したようです。

ちなみにやまばと、いえばと、どばと、きじばと、人間の住む町に住みついているハトはいろいろといますが、人間に被害を与えるのは主に、どばと、きじばとだそうです。何バトでも、許可なく捕獲したり、駆除したりすると罰っせられるんですね。鳥獣保護法という法律ですね。カラスまでこの法律で守られているというから笑っちゃいます。ヒッチコックもビックリです。

さて、このハトとのバトルが始まったのは、平成の最後の4月になってからだったでしょうか。ハトの糞がいくつかベランダに落ちていたんですね。最初はただ洗い流していたんですが、洗っても洗っても糞が落ちているんです。こりゃ、可愛そうだけど(当初はハトに対してそう思っていたんです)ハトが来ないようにしないといけないな、と思うようになったんです。そこで妻がインターネットで調べて、まず“猫ブロック”なるプラスチックの剣山のようなものをハトが止まりそうな、手すりや室外機の上の平面部分にガムテープで貼り付けました。

これにより3日は無事でした。

ところが、4日目、以前にも増して大量の糞を見えにくいベランダの隅にしていました。これだけではダメだということになり、手すりの部分にはすべて大きな洗濯バサミに釣り糸を通して“テグス”のように張り巡らせました。

これでまた3日無事でした。

もう大丈夫かな、と思った矢先の4日目、またしても糞の山、一晩にしているんですね。しかも、そこに巣を作りたいのか、小枝の木切れまで、ベランダに放り込まれいるんです。だんだん、ハトが憎たらしくなってきました。糞を洗い流すって、結構重労働なんです。それに糞には菌がいっぱいだと聞いていましたから、マスクをして手袋をして、もう大変。ベランダに入りにくくなった腹いせのようです。「フン!」てなもんでしょう!? ハトにしてみれば。

ふとベランダから道路越しに向かいの、こちらよりはやや低いマンションの屋上に目をやると、ホントに仲良さそうにハトのつがいがじゃれ合っているではありませんか。我が家よりはるかに仲が良さそうです。その仲睦まじい姿を見ると、またムカついてきました。情けないというか、この時、感情の上では、すでにハトと対等な関係になったんですね。彼らは新婚なのか、我が家のベランダに家を建てようという魂胆のようです。向こうも必死です。ハトの生活がかかっているんでしょうね。メスが「あなた、頑張って、人間なんかに負けちゃダメよ!」とか何とか言っているんでしょうね。こっちもあの手この手で応戦です。こちらも生活が脅かされるか否かの戦いですから。

テグスでだめなら、と今度は、運動会の時に国旗を張るように、ベランダに飛び込んで来にくいように、釣り糸を一か所からいくつもの方向に張りました。また2、3日ベランダは汚れませんでした。今度こそやったと思ったのですが、またしても・・・。どうやら、比較的入り込みやすいベランダの中央に降り立ち、ちょこちょこと歩いて隅に行っているようです。シツコイ、シツコイ!

今度は妻が100円ショップでツタを這わせるようなネット(網)を買ってきました。これを外から見えない範囲でかぶせました。これで、どうだ!これで我が方の勝利!とは…、いかなかったのです。今度は巣を作るつもりのなかったベランダの反対側の隅に糞を落としていました。

だんだん、追い払う術がなくなってきました。その時、妻が「あなた、ハトの嫌いな匂い!」とインターネットで調べて、探してきました。カビ取り剤を撒きました。

そして、やっと、やっと、ハトがこなくなりました。なんだかんだひと月あまりの戦いでした。カビ取り剤をあまり撒くと、ベランダの床の色が落ちちゃうので、もう来なくなったと、カビ取り剤をやめました。

そしたら翌日、たったひとつ糞が落ちていました。ゾッとしました。まるでホラー映画です。当てつけなんでしょうか、まだあきらめていないのでしょうか。疲れ果ててきました。「何が、平和の象徴だ、バカヤロウ!」と叫びたくもなりました。あれは、聖書に出てくるノアの箱舟の物語の際に、ハトが口にオリーブの葉をくわえてやってくる、それで水が引いたことを知る、といった話で、それ以来ハトは平和の象徴となったと言われています。横で「ホント頭きちゃう」と妻もぼやいていました。考えてみれば、ハトを追い払うのに妻と協力して、無い知恵を絞り、話し合い、この時ばかりは久しぶりに一つの目的に向かって夫婦仲よくのひと月でした。なるほど、ハトは平和の象徴、幸せを運んでくる鳥、なのかもしれません。桜田淳子の「クッククック―♪」「私の青い鳥」を思い出していました。

    佐々木 正洋
    佐々木 正洋
    1977年アナウンサーとしてテレビ朝日入社。16年間担当「夕刊キャッチアップ」の最高視聴率16%は今だ破られず。また、2002年出版の「ちょっとしたコツで誰でも『上手な話し方』が身につく」は、当時現役局アナとして近年初1万部を突破。猪木の闘魂ビンタの元祖。2012年独立。テレビ、ラジオで活躍の他、各種イベントの司会や講演を行い、「雑誌ネット」で記事批評を載せ、駒沢女子大学で講師を務める。インターネット、新聞などで世相を斬る、コラムニストでもある。北九州市観光大使