佐々木正洋のいまさら聞けない一般常識 ベテランアナがやさしく解説

2019.05.13

第51回「恐怖のエスカレーター」

このところマナーが変わったとかで、「エスカレーターの片側歩行は止めましょう」ということらしいですね。「両側を使って到着まで動かずにいましょう」ということのようです。

「そうなんだ、片側を急いで行っている人がじっとしている人に引っかかって、けがをする人が出ているから今後はそうするんだ」

とまぁ、ニュースの説明を聞いていたので早速、これ、実践してみましたが、怖かったですよ! 後ろから急いできている人が、歩くどころか駆け足でエスカレーターを登ってきたら(或は下ってきたら)どうしようって、もう不安で不安で。その急いでいる人に気が付かずに前を向いてじっとしたら、なにかされるんじゃないかと…。落ち着いて乗っていられないですよね。しょっちゅう、後ろを見ていました。

誰も後続がいないと、それはもうホッとしますね。そのプレッシャーやストレスってケッコウ大きいですよ。見るからにクリカラ紋々の人は最近ほとんど見かけませんが、それだけに普通に見える人が突如たけり狂う場面がよくSNSからアップされニュースになっていますよね。あれを思い出したら、もういけません。ホント、ドキドキしましたもんね。

たかだか10m足らずのエスカレーターでしたが、東京で言うとエスカレーターで右側(大阪は左側)の列に乗ってじっとしているのはムリですね。誰も後ろから来ていないのを確認して両側、歩かずに立ったまま、というのはアリかもしれませんが、ね。

第一、朝のラッシュ時に少しでも無駄なく電車の乗り継ぎをするために、乗り換えの時間をギリギリにしか考えていないサラリーマンの人は多いでしょう。ゆっくり時間をとって出勤しましょう、なんて、絵空事ですから。そんな状況でテコでも動かないというのはもはや単なるイジワルですよね。

僕なんかは、殆ど朝ラッシュ時に電車に乗ることがなく、たまにそういう時刻に仕事に向かうともう気後れするは、疲れるは、で大変。あの中でエスカレーターは両側に立ち終点まで動かずにいましょう、なんていうことはおおよそ現実的ではないですね。

ですから、朝夕のラッシュ時は、このマナーはまず、通用しないですね。では比較的皆さんがゆったり移動する時間帯はどうでしょうか。これは、横に階段が付いていたりすれば、まぁ、出来なくはないですね。それとデパートの中にあるエスカレーター、これは両側に立って動かないというのは、安全面から考えても、時間帯の人の移動スピードからいっても、アリですね。観光地などにあるエスカレーターも“両側不動乗者”は可能のようです。

要するに“ゆったり”が前提になっている場所にあるエスカレーターならば、動かずに乗っていられるということでしょうかね。とはいうものの人間勝手ですからね、いや他人事ではなく自分を顧みてもそうなんです。自分が急いでいる時は、デパートの中であろうが、観光地であろうがエスカレーターに乗っていても早足になっちゃうんですね。そして自分が急いでない時は、急いでいる人を見て「エスカレーターは両側たったまま動いちゃダメなのに」なんて思っちゃうこと、正直あります。僕は、人間出来ていませんからね。

となると僕のような人間にはどうしたらよいか。これはさほど難しいことではないんです。マナーというより、法律までいかない、規則にしちゃうんですね。と言えば従う人は日本人の場合、ぐっと増えますね。そう言われると僕などはもう降参です。

実際、2014年には東京消防管内だけで1443人がエスカレーターで怪我をして救急搬送されたそうですから、規則を作るのは大事なことですね。それでどうしてもその規則を守らせたければ、立て札を出して事故になりやすいエレベーターの乗り降りのところに、しばらく人を立たせないとダメですね。

まぁ、現実はそこまで経費を使ってやらなくても、と思っている人が多いんでしょうね。立て札も監視員もあまり見たことないですよね。なんか話が堂々巡りしてきましたが、

結局は、お互いの気遣い、思いやり、ですよね。そんなゆとりが日本にはないものだから、融通がきかないんですね。因みにエスカレーター発祥の地、紳士の国イギリスでも、アメリカでも片側は急ぐ人の為に空けてあるそうです。ぐるっと回って考えるとそれでいいです、かね。

それよりも何よりも、エスカレーターに乗る直前、降りた直後に止まっちゃう人、これが一番危険ですね。ぶつかりそうになったこと、ありませんか?

    佐々木 正洋
    佐々木 正洋
    1977年アナウンサーとしてテレビ朝日入社。16年間担当「夕刊キャッチアップ」の最高視聴率16%は今だ破られず。また、2002年出版の「ちょっとしたコツで誰でも『上手な話し方』が身につく」は、当時現役局アナとして近年初1万部を突破。猪木の闘魂ビンタの元祖。2012年独立。テレビ、ラジオで活躍の他、各種イベントの司会や講演を行い、「雑誌ネット」で記事批評を載せ、駒沢女子大学で講師を務める。インターネット、新聞などで世相を斬る、コラムニストでもある。北九州市観光大使