佐々木正洋のいまさら聞けない一般常識 ベテランアナがやさしく解説

2019.04.15

第49回 2045年問題―人間必要ですか⁉

2045年というと「そんな先のことを言ってどうするんだ!」お叱りを受けるかもしれませんが、それほど先のことでもありません。人生100年時代に突入した現在、60歳の人はまだわずか26歳足して86歳、去年お亡くなりになった、かの聖路加国際病院名誉院長の日野原重明さんは105歳まで飛行機に乗って各地で講演されていましたし、南米最高峰アコンカグア(標高6961メートル)の登頂とスキー滑降をめざしている三浦雄一郎さんは86歳でいらっしゃいます。そんな人たちは特別だとおっしゃるなら、僕の義父は今95歳で施設の世話になっていますが、三浦さんと同じ86歳でフランスは芸術の街、モンパルナスを訪ねています。

だから現代人にとって、それほど遠い先ではないんです。で、その時に何が起こるかというと、AIが人間のインテリジェンスを超え、加速度的に進化する分岐点になる年なんです。人間の知性の総和を超えるんですよ。ちょっと怖いですよね。

そんなに先ではないと言いながらも、僕もどこか他人事のように言っているところはありますが、現実にそんな時代がやってくるんです。その頃、人間の平均寿命は、特に日本人の平均寿命はおそらく男女とも90歳を超えています。

つまり、我々シニア世代がまだ生きているうちに人間とアンドロイド(いわゆる人型ロボット)が共存しているんですね。ちょっと聞くと楽しそうですが、現実は危うい局面に差し掛かっているかも知れないというんですね。

どういうことかというと、今の様な低次元の争いを人間が繰り返しているとそれらを学習したアンドロイドが、悪の権化となり人間を支配する恐れがあるというんですね。科学者の皆さんが言うには、2045年を境にアンドロイドが自らを進化させるのですから、あり得ないことではないんですね。

そんなバカな、と冷ややかに笑っている方も少なからずいらっしゃるでしょう。

しかし、30年前のスーパーコンピューターより現在のスマホの機能の方が優れているんですよ。ips細胞から作った「人口脳」が受胎後25週から38週の赤ちゃんの脳と似た脳波が確認された事実があるんですよ。2030年までに自動運転の車の中が飛行機のファーストクラスのような空間になるとボルボ・カーは言っているんですよ。ですから、そういう事態になっていたとしても不思議はないですよね。

さあ、そうなると厄介なのは、人間の精神です。これも変化はしていくでしょうが、科学ほど変化が圧倒的ではないんですね。

現に紫式部が書いた「源氏物語」、これは平安時代中期、1005年までに起筆された作品とされています。内容は、あくまで乱暴な言い方ですが、理想の女性を求めてプレイボーイ光源氏が自由奔放な人生を送りながらも栄達を重ねていくという羨ましい限りのストーリーです。もちろん、そこには男と女の機微も描かれているからこそ文学作品として超一級に位置しています。

でも、よく考えると1000年も前の文学なのに主人公が雅なだけ愛欲の本質は今とそれほど変わっていないんですよね。

ところ変わって西洋も同じです。このコラムでも書きましたが、400年前に描き上げたシェークスピアの作品の数々、例えば四大悲劇「リア王」「マクベス」「オセロー」「ハムレット」等々。これらに見るように洋の東西を問わず恋愛、欲、権力など人間の持つ「業」の様なものは何百年経っても大して変わってないんですね。

現代でも、人付き合いは面倒だという若者が増えていると言っても、いろいろなところで“オフ会”なるものが催されていますよね。渋谷の街にハロウィンで若者が溢れかえるのも“招待状のいらないパーティ”だと言った人もいます。限られた人しか集えないパーティではなく誰しもが平等に楽しめるフェスティバルにもやっぱり人は集まります。そこには様々な「欲」が渦巻いています。

そうやって考えると基本的には人間の不安定な感情、情緒はいつの時代もそう変化しません。

反面、規則正しく、整然と合理的に、正しい情緒だけを優先させる間違いのないアンドロイドが重宝がられていくということは、不出来な人間はどんどんと肩身が狭くなっていくということなのかもしれません。

それでなくても、セクハラ、パワハラ、コンプライアンスなどが意識づけられ、進化した人間に対してだけに相応しい文明社会が構築されつつある現代です。未来社会が、そんな完璧を期して作られたアンドロイドに手玉に取られる、ヒト社会にとっては息苦しい、住みにくい社会になっていないことを祈るばかりです。

    佐々木 正洋
    佐々木 正洋
    1977年アナウンサーとしてテレビ朝日入社。16年間担当「夕刊キャッチアップ」の最高視聴率16%は今だ破られず。また、2002年出版の「ちょっとしたコツで誰でも『上手な話し方』が身につく」は、当時現役局アナとして近年初1万部を突破。猪木の闘魂ビンタの元祖。2012年独立。テレビ、ラジオで活躍の他、各種イベントの司会や講演を行い、「雑誌ネット」で記事批評を載せ、駒沢女子大学で講師を務める。インターネット、新聞などで世相を斬る、コラムニストでもある。北九州市観光大使