佐々木正洋のいまさら聞けない一般常識 ベテランアナがやさしく解説

2019.04.08

第48回 胃カメラと大腸検査、今昔物語

上部消化管内視鏡検査――これがいわゆる「胃カメラ」の正確な医学的用語のようです。その「上部消化管内視鏡検査を受けられる方に」という注意書を渡されるのですが、【上部消化管(食道‣胃・十二指腸)を内視鏡を用いて検査をします】となっています。

どこで注意書きを渡されるのかというと、それはもちろん病院、ただし病院と言っても、他に大腸の内視鏡検査もやる、おおかたが検査のための病院です。保険証が利くということはどこか悪いところがある、というのが前提のようですが、そこは大目に見ましょう。

大変な人気の検査病院なのですが、何でそんなに患者さんに人気があるのか、僕が経験したことを振り返ればすぐにわかりました。

ひと昔前は胃カメラというと、不味いバリウムをしこたま飲まされ、機械に体を縛りつけられ、宇宙飛行士の訓練のように上下左右に体をぶん回されるという光景が当たり前でした。挙句に柄の先にグーが付いている棒のようなものでグイグイっとお腹を押さえつけられるんですね。皆さんも経験があると思うんですが、あれって、健康診断っていう名の暴力に近いものがありましたよね。

しかも、「ゲップをこらえてくださ~い。胃が膨らんでないと胃の中がよく見えませんからねぇ!」などと検査技師が、一応優しい口調ではあるけれど無味乾燥な声でマイクを通してガラス越しに隣の部屋から指示してきます。以前は毎回『勝手なことを言うな!』と思ったものです。

大体、バリウムが胃の壁にまんべんなく行き渡らないと胃の中の様子がよくわからない、そのために体をグルングルン回す、という理屈は素人にもわかりやすい原始的なものです。

そして、ここは今現在と同じですが、胃の中を空っぽにしておかないと胃の中の様子がわからないからと、前日の夜から何も口にせずに検査を受けるんですね。そこへバリウムをたらふく飲むものだから、検査後下剤を渡されても、これが効かずに急性の便秘になる人も続出したんです。

やっと出たウンチは最初、真っ白で「なんじゃこりゃ!」と思ってしまうんです。飲んだバリウムのせいであることは言うまでもないんですけどね。そんなこんなで、あの検査で体調を崩してしまうんじゃないかと思うほどでした。

それに比べると今の胃カメラの、特に僕が行っている渋谷にあるクリニックでの検査は、もう天国です。胃の中を見やすくする“シロップ”を飲んで、ゼリー状の麻酔薬で、喉の麻酔をするんですね。これは内視鏡の管を通す時に喉が敏感だとむせったりせき込んだりして、検査が難航するからです。

楽な検査が受けられるように鎮痛剤と鎮静剤を注射するんですが、これ、全身麻酔のごとく完全に眠った状態になる事はありません。注意書きにはそう出ていますが、僕などは、あっという間に意識を失います。そして女性看護師さんの、マイクを通さない、ホッとする優しい声で「ハイ、終わりましたよォ」という声で、ぼんやり目が覚めるんです。

その後ベッドに横たわったまま、1時間くらい休んでから、病院を後にするといった具合です。ですから、痛くもかゆくもなく検査が終わるんです。その後、内視鏡で撮影した食道や胃の画像を見ながら診察。今回は「何も問題ありませんでした」のお医者さんの声ですべてが終了と相成ります。

たしか去年は ポリープがありました、と言われてちょっと落ち着かなかったことを覚えています。それから2週間後、今度は大腸検査でした。こちらは、いまだ2リットルくらいの下剤が入った液体や水やお茶のペットボトル(500ml)2本分を飲み干してその間何回もトイレに。大腸がきれいになったところで、検査となります。控室でくつろいでいると隣のおじさんはこちらが聞いてもいないのに、トイレの排出の様子を話しかけてきました。あまり楽しいものではないのに、「やっときれいになったんです」とニコニコ話し始めました。『こりゃ困ったな』と思っていたら、ようやく名前が呼ばれて検査開始、こちらもあっという間に意識がなくなり、気が付く頃にはすべての検査が終了というのは胃カメラの時と同じです。休んだ後は診察。今度は、ポリープが1個あったので取りました、とのこと。今までは大腸にはポリープがなかったのになあ、などとその医者の説明を少しだけ恨めしく聴きました。

まぁ、良性ならば気にすることはないんですけどね。これで、しかし、これまで2年に1回でよかった大腸検査が1年に1回になっちゃいました。結局、これからは1年に1回は胃カメラと大腸検査、ということになります。振り返ってみると胃や大腸の検査も昔と比べると格段に楽になって、健康も維持できるようになってきているんですね。

あとは、60過ぎてからの生き甲斐、ですね。毎年、検査が終わって外に出て、健康がある程度確認できると、それなりに清々しい気持ちになりますね。人生、“雲外蒼天”だって! 皆さんはどんな検査を受けて、どんな気分を味わっていますか?

    佐々木 正洋
    佐々木 正洋
    1977年アナウンサーとしてテレビ朝日入社。16年間担当「夕刊キャッチアップ」の最高視聴率16%は今だ破られず。また、2002年出版の「ちょっとしたコツで誰でも『上手な話し方』が身につく」は、当時現役局アナとして近年初1万部を突破。猪木の闘魂ビンタの元祖。2012年独立。テレビ、ラジオで活躍の他、各種イベントの司会や講演を行い、「雑誌ネット」で記事批評を載せ、駒沢女子大学で講師を務める。インターネット、新聞などで世相を斬る、コラムニストでもある。北九州市観光大使