佐々木正洋のいまさら聞けない一般常識 ベテランアナがやさしく解説

2019.01.07

第41回 フレディ・マーキュリーという伝説

1973年にデヴューですから、僕が大学1年生の頃ですね。当時、クイーンというバンドが凄い、というのは風のうわさには聞いていましたが、全く僕はそのトレンドにはなかったんですね。どこにいたかというと落語研究会でした。

それなら、しょうがないねという人もいるかもしれませんが、それは間違いです。“落語”と“クイーン”って“水と油”じゃないんです。熊さんも八っつあんもフレディも人間の叫び、ですね。

そういう意味では双方ロックだと気が付かされました。だから当時クイーンに目が向いていなかったというのは、僕の落ち度ですね。いや、あまりにも幼稚な人間だったからかもしれません。今回、あんまり周りで「いい、いい」って言うからやっと見たんですが、こりゃ、当時からクイーンに触れてなきゃいけませんでした。ビートルズはあのバンドに比べるとアイドル、ですね、今にして思えば。

どちらも天才ですけどね。わかりやすいのは圧倒的にビートルズだったように思います。どうしてそんなことを思うかというと、かつて立川談志という不出世の天才噺家がいました。でもこの談志さんとビートルズのメンバー、例えばポールマッカートニーと対談するシーンを見たいかというとさほどではない。フレディ・マーキュリーと談志さんの対談は想像しただけで緊張しますが、見たかった。そういうことです。大喧嘩になるかもしれないし、フレディが落語をやりたいと言い始めるかもしれない、おおよそ見当がつかないんですね。二人の摩擦熱が凄いだろうなって。ただ、二人の違いって主張するかどうか、ですね。談志さんは本質的なところは聞かれないと喋らない。もちろん高座以外でですよ。でもフレディは主張するんですね、常に叫ぶんです。日本の風土とイギリスの風土の違いかもしれませんが。

話は変わりますが、あの映画『ボヘミアン・ラプソディ』の中でフレディ語録が次々に出てきます。そのひとつに“幸運は勇者の前に現れる”というのがありました。まったくその通りです。

とすると、これからのニッポンの前に幸運、幸せが訪れるでしょうか? 疑問です。

もうひとつは舞台がイギリスだけにシェークスピアという名前が出てきます。これがまた面白いですね。ニュートンが「万有引力の法則」を発見する(1665年)、その前の時代、1606年頃、この頃立て続けに『リア王』、『マクベス』が発表されますが、400年前の作品群に、まさに現代に通じる老人介護、不倫、嫉妬、欲、権力、愛憎、男と女、夫婦愛、家族、差別の問題、などが網羅されているんですね。シェークスピアが凄いのはその辺の人間の本質への洞察力であることは言うまでもありませんが、こうなってくると人間という生き物には、おおよそ性悪説を唱えざるを得なくなりますね。

そしてあの伝説になったフレディ・マーキュリーが父から常に言われていた「善き思い、善き言葉、善き行い」だけがそれら人間の悪行を駆逐することができるのではないかと思い至るのです。映画の中ではこの3つの言葉が感動的に出てくるシーンがあります。感極まります。良識、常識の世界ではいわゆるロックは好まれません。おさまりが悪いし、規律から、統治から、遠くに位置するものなのに、それらを脅かすからです。

要するに自由であり、反権力だからでしょう。この映画は一説には大いに流行っているのは日本だけだというんですね。もしそうであれば国民自ら今のニッポンに危機感を感じているのかもしれませんね。平和ボケしている中で、“自由”であることと“横暴”であることが混同され、反権力的な考えが身を潜め、今の状況に甘んじ、思考停止状態の国がいつまでも繁栄を享受するわけがありませんから。

この話、どこへ行くか自分でもわかりませんでしたが、やっぱり特に野党の皆さんに必ずこの映画を見てもらいたいということになっちゃいますかね⁉

 

    佐々木 正洋
    佐々木 正洋
    1977年アナウンサーとしてテレビ朝日入社。16年間担当「夕刊キャッチアップ」の最高視聴率16%は今だ破られず。また、2002年出版の「ちょっとしたコツで誰でも『上手な話し方』が身につく」は、当時現役局アナとして近年初1万部を突破。猪木の闘魂ビンタの元祖。2012年独立。テレビ、ラジオで活躍の他、各種イベントの司会や講演を行い、「雑誌ネット」で記事批評を載せ、駒沢女子大学で講師を務める。インターネット、新聞などで世相を斬る、コラムニストでもある。北九州市観光大使