佐々木正洋のいまさら聞けない一般常識 ベテランアナがやさしく解説

2018.06.18

第24回 どちらが先?

他人にしてみればつまらぬ事でも、当の本人にしてみれば大真面目なテーマというのがありますよね。

例えばトーストを焼くのが先か、ミルクを温めるのが先かなんかがそれです。これとて朝食時に限って言えば、世界平和と同じくらい重要な問題だという人もいます。その人の一日の出だしですからとても重要ですよね。

このことに関して言うと、僕は今でも多少迷いますが、やっぱり「先にトーストを焼く」ことのほうが多いようです。

理由はホットミルクが生ぬるくなると朝食全体が引き締まらなくなるからですね。トーストはバターが溶けながら滑るようにスムーズに食パン全体に塗れれば、それで満足で事足りると考えるからです。

ただ、トーストもパリッとした感じを保ったうちに食べたければ、やはりあまり時間が経ってはダメですね。

考えてみれば、今は、各家庭に電子レンジとオーブントースターの両方がありますから、そんなにそのことで悩む必要はないですね。同時進行形で準備ができますからね。あっ、あと、食べ物に関して言うと、野菜サラダと肉と両方が出てきたら、まず先に野菜サラダを食べる、これ、マジですが、皆さんに言うのは釈迦に説法ですね。

前書きはそれくらいにして今、僕が一番気にしているのがエレベーターの乗降についてです。ちょっとボーッとしていると、いくつものアクシデントにぶつかります。

まずエレベーターを呼ぶのに、今2Fにいて6Fに行きたければ当然、上を指す↑を押しますよね。ところが、ボタンを押す時に、たまたま5Fにエレベーターが止まっていることがわかると、下を指す↓を押す人が意外に多いんですね。

それでもってエレベーターが来ると「あら、下に行くの?」などと、まるでエレベーターが悪いように言う人がいますよね。

あれってバツが悪いものだから、誰も咎めていなくても、人間の性(さが)として言い訳をしてしまうんでしょうね。そして慌てて今度は上を指す↑のボタンを押すことになります。それでそのまま乗っていると下に向かいますよね。あれって、下の階でエレベーターを呼んで無ければ、エレベーターの【閉】マークをずっと押しているともう一度その階で開くようになっているエレベーターと、開かずにそのまま上に向かうエレベーターがありますよね。急いでいる人にしてみれば、開かずに上に向かってくれるエレベーターの方が助かるでしょうが、間違えて他人がボタンを押しちゃったから、もう一度下から上がってきたときに乗ればいっか、と高を括っていると、エレベーターの扉が閉じてそのまま上に向かっていって憤慨、なんてこともありますね。そのまま行っちゃったら結構ショックですもんね。

次の難関が、【開】【閉】のボタンです。エレベーターが閉じようとしている、その時に、なんとかそのエレベーターに乗りたいと小走りでエレベーターに向かってきている人を目撃すると、親切心でエレベーターを開けてあげようとして【開】マークのボタンを押してあげる、これが間違えていなければ、混んでいてもエレベーター内、ちょっといい雰囲気になりますよね。間違えて【閉】マークのボタンを押してしまって、寸前のところで、乗れなかった、というと、もういけませんね。【開】【閉】のボタンを間違えて押した人は、たいがい「アッ」と小さな声を出すんですが、後の祭り。他の乗客も声にこそしませんが、『あ~あ』と間違えた人の背中に痛い視線を浴びせます。

乗れなかった人とは赤の他人ですから、それっきりということで済むでしょうが、必死にエレベーターに乗ろうとした人が外側から【開】のボタンを押して扉が開くともう最悪、間違えて【閉】マークを押した人と再び顔を合わせることになります。エレベーター内もそういう時に限って混んでいたりして、険悪なムードに包まれますね。真面目で口数が少ない人が多い日本人は、そういう時に特に何もしゃべらないものだから、なおさら、妙な空気に包まれます。代わりに『悪気なかったんですよ、この人!』と言ってあげたい気持ちもありますが、それはそれで、ちょっと変ですから、結局、誰も何も言わず。下手をすると誤解されたまま、なんていうこともありますね。実際、本当にちょっとイジワルで、容赦なく閉める人、いますもんね。

そして、そして一番の問題が発生します。エレベーターに乗りこみたい人が、降りる人を待たずに乗り込もうとするとき、混乱して、いたずらに時間だけ過ぎていきますよね。電車でもそうですよね。降りる人を待たずに乗り込もうとする人、いますよね。なんで、待てないんでしょう?と言いながら、僕も降りる人を確認せずに乗り込もうとしたことがあります。なぜ、そんなことをしでかすのか。理由がわかりました

心に余裕がないんですね、そういう時って。理屈では、降りる人が終わらないうちは、エレベーターでも電車でも発車できない、ことは小学生でもわかることですよね。部屋の出入りもそうですよね。とにかく、常に出入りが必要とされるものは、出る方が優先ですよね。こんな簡単なことを自分に言い聞かせておけば、後は<ゆとり>の問題、ですね。普段、5秒、10秒なんて意識するほどの時間ではないのに、ああいう“乗り降り”となるとほんのちょっとが待てないんですね。不思議ですよね。でも逆に考えれば、ああいう時に「待てる、待てない」というのは【心の余裕】のバロメーターだと思えば、イライラすることもずっと減りますね。

ただ、満員電車で、早く乗らないと遅刻しちゃうという時に、スマホやゲーム機をいじっていて、ことさらノンキに出てくる人、あれは迷惑ですね。こんな、他愛もないことだけど、重大な問題、というのは結構ありますね。それらに、イラっとせずに、ムカッとせずに、笑顔で対処することが出来るようになれば、その人にとって、世の中、さらに楽しくなりますよね。

    佐々木 正洋
    佐々木 正洋
    1977年アナウンサーとしてテレビ朝日入社。16年間担当「夕刊キャッチアップ」の最高視聴率16%は今だ破られず。また、2002年出版の「ちょっとしたコツで誰でも『上手な話し方』が身につく」は、当時現役局アナとして近年初1万部を突破。猪木の闘魂ビンタの元祖。2012年独立。テレビ、ラジオで活躍の他、各種イベントの司会や講演を行い、「雑誌ネット」で記事批評を載せ、駒沢女子大学で講師を務める。インターネット、新聞などで世相を斬る、コラムニストでもある。北九州市観光大使