佐々木正洋のいまさら聞けない一般常識 ベテランアナがやさしく解説

2018.04.18

第19回 日本人は “Hey siri” が苦手

突然ですが、あなたはスマホに向かって「Hey siri」と話しかけた事ってありますか?

詳しい統計を取ったことも調べたこともないけれど、少なくとも僕の周りでは、妻以外、若いとか年寄りとか関係なく殆どの人が「話しかけた」経験さえもないんですね。

佐々木は若い人と交流がないだろうという人もいるかもしれませんが、女子大で教えているので講義室で聞いてみると直ぐにわかります。

僕自身、ずいぶん前に一度「siri(シリ)さん」に話しかけてみて要領を得なかったものだから、それっきりになっていました。

ところが、最近になってどうも予定を忘れることが増えてきた、とに話したところ、それなら「siri」を使ってスマホのカレンダーに書き込んでおくといい、と言われ渋々、再びこの「siriさん」と向き合うことになりました。

まぁ、相変わらず使い勝手の悪い事。向こうで喋る声はきれいなしっかりした声で美人を連想させ、有能な秘書を思い浮かべてしまうのですが、まったく気が利かないというか急いでいる時などストレスが溜まるばかりです。

例えばまず「Hey siri!」と呼びかけます。ここは問題なく「はい」とか「御用は何でしょうか?」とか応えてくれます。問題はこの後からです。

「これから聞くことに答えてもらえますか?」と尋ねると「済みませんが、それはできません」と返ってきます。

さらに「どうしてですか?」と尋ねると「それは鋭い質問です」という、人を小バカにしたような答えが出ます。

国会でこんな答弁を事務次官がやったらどうなるでしょうか。もはや笑いがこみ上げてきます。そうでなければ「バカにしているのか」とこちらがアプリに対して言い返したくなります。

そこでその続きで「アホ!」と言ってみました。そうしたら画面には漢字で「阿保」と出て「siriさん」から思いもかけない言葉が、「そうですか。でもまた聞きたいことがあったら言ってください」と出ました。

このちぐはぐさは何でしょうか。日本語がわかっていない外国人と話しているようです。

そうなんですね、おそらくこの「siri」の発祥がAppleですから日本語的な会話のセンスではないんですね。

今、ふと思ったのですが、これクイズ番組になりますね。「siriさん」は「何て答えるでしょうか?」って。「siriさん」は答えを外す天才ですから、お笑い芸人さんの上をいく奇想天外な答えが出てきそうです。

閑話休題、日本人はなぜ話をするのが苦手なのでしょうか。

「目は口ほどにモノを言う」、「沈黙は金」なんて諺は外国には見られません。

むしろその逆でその時その時に応じてはっきりモノを言う、ということが大事とされています。議論し尽くすことが西洋民主主義の根幹なんですね。

反対に日本では「皆まで言うな」という言葉があります。

それは思うに外国は多民族国家だからです。雄弁にモノを語ってどちらが説得力があるか、説得力ある喋りが出来る方が、時に、正しい、間違っている、という事より優先されます。

そこへもっていくと日本という国は基本的には単一民族で構成されている国家です。それは本来、お互いが分かり合える、あるいは赤の他人、赤の多民族国家とは違い、どこかでつながっていると考えられる単一民族国家からくる信頼が前提とされている、という安心感が先に立ちます。

そうすると変に饒舌だと返って『コイツ、あやしいゾ』てな具合になるのかもしれません。別に「変に饒舌」になるわけではないんですけどね。

いずれにしてもそうやって考えると日本人は、多くを語らない人種であることに合点がいきます。一般にあまり仲がいいわけではない人と喋ることを嫌い、恥ずかしがります。

僕は商売が“喋り”にあるせいでもあるのでしょうが、どこででも朝だと「お早うございます」昼だと「今日は」。

意外に夜「今晩は」という機会は少ないですが、なるべく挨拶をしようと心がけています。

でもお逢いした人は知っている人でも面喰った表情を見せる人は多く、なかには戸惑いを見せる人さえいます。これはもう日本人ならではの反応です。割合から言うと今回のコラムに「だから、なんなんだよ。おまえイチイチうるさいんだよ」とおっしゃる人の方が多いかもしれませんが、ちょっと気持ちを前向きにして、せめて顔なじみの人には挨拶をしてみませんか、という話です。

きっとそれだけで朝出かける前なら、挨拶された方もわずかでも気持ちの良いものだと感じると思いますよ。挨拶が返ってくると、挨拶した方も気持ちが良くなります。それで意志の疎通が図れるなんてことは言いませんが、毎日顔を合わせる人がいるエリアの雰囲気はグッとよくなりますね。

お互い仏頂面で顔を合わせるより、笑顔で「今日は」と言った方が世の中あったかくなるにきまっています。大げさに言えば、今日から変えられる勇気ある行動、ってなわけです。でも、そんなこんなの理由もあり、「siriさん」がどんなに美人でも日本ではモテませんね、これからもきっと…。

    佐々木 正洋
    佐々木 正洋
    1977年アナウンサーとしてテレビ朝日入社。16年間担当「夕刊キャッチアップ」の最高視聴率16%は今だ破られず。また、2002年出版の「ちょっとしたコツで誰でも『上手な話し方』が身につく」は、当時現役局アナとして近年初1万部を突破。猪木の闘魂ビンタの元祖。2012年独立。テレビ、ラジオで活躍の他、各種イベントの司会や講演を行い、「雑誌ネット」で記事批評を載せ、駒沢女子大学で講師を務める。インターネット、新聞などで世相を斬る、コラムニストでもある。北九州市観光大使