佐々木正洋のいまさら聞けない一般常識 ベテランアナがやさしく解説

2018.03.20

第17回 やっぱり政府と官僚は疑わしいですね

前川喜平前文科省事務次官を覚えていらっしゃいますか?

このところ、全く登場しませんね、と書き始めようと思ったら、思わぬところで名前が出てきました。前川氏を招いて講演会を実施した名古屋市立八王子中学校に対して、文部科学省が異例の書面回答要請メールを送ったんですね。

しかも、その書面の内容がまた異様なんです。

“何故、前川さんを呼んだのか”

“どういう目的があったのか”

“保護者の反応はどうだったのか”

“講演録や録音データがあったら提出を”

回答要請は、15項目にも渡るものでしたが、質問内容を見ると、中学生を洗脳している悪人にでも送っているような言い回しです。

さらに極めつけは、学校側が、「前川氏の許可が無ければ録音データは提出できない」と回答すると翌日、文科省からこんな文言が来たんです。

“前川氏の許可を取らなければいけない理由はなんですか?”

怖いですね。これは質問でも問い合わせでもなんでもないですね。検閲というか、恫喝というか、国家権力による圧力というか、まるで習近平氏の独裁が始まろうとしている中国とほとんど変わりませんよね。

この文科省がとった行動について林芳正文科大臣は「メールでの表現ぶりについて『もう少し慎重に検討した方が良い』と(職員に)注意を促したところです」とは言ってはいましが、同時に「法令に基づいた行為だった」とも述べていました。

でも、なぜ今さら、1年以上も前に辞めてしまった前川さんの言動に対して文科省がピリピリしているんでしょう。

文科省は、表向きには在籍中に、組織ぐるみの天下り問題に関与し、不適切な出会い系バーに通っていた前川氏が、道徳教育の場に相応しい話をしたかどうかを確認する為、としています。

この文科省の回答に対して、NHKの『ニュースウオッチ9』ではキャスター氏が「現場を信頼して欲しいですね」という程度のコメントに留まっていましたが、これはさすがにカーリング娘のように「そだねー」という訳にはいきません。

なぜなら、文科省のこの回答は、あくまでも「表向き」なんですね。

『みんなわかってるクセに』って思わず言いたくなります。

なぜ文科省が前川さんををここまで執拗に追い詰めるのか。

それは彼が、あの加計学園問題で流行語までなった「総理のご意向(音は御威光とも)」文書を野党に渡した張本人だからなんですね。

だから、現在、森友問題に揺れる政府にとっても官僚にとっても前川さんは厄介者以外のナニモノでもないんですね。関係者にとっては『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』といったところかもしれません。

ただ、ここでややこしいのは、前川さんが事務次官というエリート官僚でありながら敢然と権力に立ち向かう真の超エリートだったかどうか怪しいところがある、ということなんですね。

実は、当時問題になった文書は、結局公文書でも何でもなかったんですね。

内閣府に出向した文部科学省の課長補佐、内閣府や官邸を快く思っていなかった牧野美穂氏が書いたとされるんですね。

そのあたりのことはhttp://netgeek.biz/archives/98162を読むと面白いですよ。

ここに出てくる牧野美穂氏が書いたとされる文書を読むと「総理のご意向」と言う言葉がいかに独り歩きしたかが、よく分かるんですね。

でもそのことさえもどこまで“真実”かはわかりません。“真実”と言う言葉自体がまやかしで、“事実”といったほうが良いですね。

もしかしたら“事実”は自分を天下り問題で辞任に追いやった政府に対しての“意趣返し”だったかも知れないんですね。

そんなことを考えると森友学園の書き換え問題も何がどこまで事実なのかわからなくなりますよね。

ひとつはっきりしているのが、“野党の皆さんの質問力の低さ”ですね。

ここぞとばかりのパフォーマンスはもういいですから、事の本質に迫る質問を是非お願いしたい。

野党の皆さんは、昔の『刑事コロンボ』あたりをみて勉強したほうがいいですよ。

「ちょっと待ってくださいよ、麻生さん」ってな具合で。

「(財務大臣を)辞めない」と言っている麻生さんの方が毅然として見えちゃまずいでしょ。

    佐々木 正洋
    佐々木 正洋
    1977年アナウンサーとしてテレビ朝日入社。16年間担当「夕刊キャッチアップ」の最高視聴率16%は今だ破られず。また、2002年出版の「ちょっとしたコツで誰でも『上手な話し方』が身につく」は、当時現役局アナとして近年初1万部を突破。猪木の闘魂ビンタの元祖。2012年独立。テレビ、ラジオで活躍の他、各種イベントの司会や講演を行い、「雑誌ネット」で記事批評を載せ、駒沢女子大学で講師を務める。インターネット、新聞などで世相を斬る、コラムニストでもある。北九州市観光大使