佐々木正洋のいまさら聞けない一般常識 ベテランアナがやさしく解説

2018.02.05

第13回 仮想通貨の信頼性

coincheckという仮想通貨の取引所で580億円という莫大な金額に相当するNEM(ネム)という仮想通貨が不正流出し盗まれたんですね。

この事件の発生が1月26日(午前0時過ぎ)だったんですが、実は仮想通貨のことを取り上げて当コラムの原稿第一弾を書いたのが22日だったんですね。偶然にも時期が重なったので追記しています。

今回の事件、犯人がどういう人間か、あるいはどういう組織か知りたいですね。coincheckといえばお笑い芸人の出川哲郎さんが去年2017年12月以降、盛んにCMに出演していて日本でも急成長した最大手の取引所のひとつだったんですね。

最大手の取引所でコイン流出事件と言えば東京を拠点としたマウントゴックスが思い出されます。2014年、当時114億円相当のBitcoinが盗まれ総額およそ140億円の被害に遭ったと報じられて大騒ぎになったんでしたね。

真相は、マルク・カルプレス社長がユーザーの預金28億円を着服せんが為の犯行というお粗末なものだったんです。

皮肉にもBitcoinは当時約15,200円の価格で現在は暴落したとはいえ100万円以上の価格で取引されているのですから、当時のざっと70倍、8,000億円の資産価値にまでなっているんです。

倒産したマウントゴックスの債務総額が456億円と算定されていますから、今なら被害者に全額返済できるのに、まったくそれはなされていないんですね。政府も金融庁も動いていないんです。75万Bitcoinで返済すれば怒る顧客はどこにもいないはずなんですけど、そのBitcoinはどこにいっちゃったんでしょうね。ウヤモヤですね。いかに世間が仮想通貨に冷たいか、というよりそんなものに現を抜かす、金持ちの道楽みたいなもの、被害者なんてどうでもいい!と思っているというのがよく表れています。

ですから、今回のcoincheck仮想通貨事件でも、『ざまあみろ!』と思っている人が大勢いると思いますよ。僕も顧客に対して特に可愛そうだとは思いませんが、coincheckに対しては腹が立ちますね。coincheckのCOO(最高執行責任者)大塚雄介氏は知る人ぞ知る仮想通貨第一人者ですから、大口出金者に対するアラート対策が取られていないことのほうが不思議なんですね。

しかも今回、Bitcoin、ETH(イーサリアム)やRipple(リップル)などと比べるとマイナーな存在であるNEMを580億円も運用していたとすると、日本最高12種類の仮想通貨を取り扱っているcoincheckの資産は下手したら1兆円近い、ということになるんですね。それで人手が足りなかった、十分セキュリティは施していた、というのは通らないですよね。“驕る平家は久しからず”今から800年以上も前の歴史上の言葉がそのまま当てはまって、文明は進歩しても、人間の本質は変わらないということを如実に物語っていますよね。

専門家に言わせると当然やっておくべきセキュリティが全く施されていない、と。まるで、大金持ちであることは誰でも知っているのに、直ぐに開けられる玄関の鍵しか掛けてなくて部屋に入れば金庫にも入れてない大金が、山と積まれている状態だそうです。そりゃ盗みに入った泥棒さん、プロですから10数分であっという間に盗み出したという訳なんですね。家の人間は、10時間以上経ってその盗みに気が付くんですから、自作自演じゃないのと疑われても仕方がないですね。

今回のことで、何が一番重要なことか、そのポイントは仮想通貨の将来に大きく関わる《信頼性》なんですね。仮想通貨を扱う取引所は限られていて、と言っても、世界には何千か所とあるでしょうが、そこへ送るのにいつどこの取引所に送ったとデータ(アドレス)が残るんです。

しかもその足跡は、追尾することができる。さらにはNEM財団が間もなく完成させる「自動タグ付けシステム」を導入して、盗まれたNEMのアカウント(今回の場合は訳すと「財布」かな)にタグをつけ、そのタグが付いていると円やドルといった法定通貨に換金できない仕組みを導入すると発表しているんです。

こうなると犯人サイドは八方ふさがりということになります。そのタグを外す技を犯人サイドがもっているか、タグをつける前に現金化できるか、他の1000種類以上あるコインに細かく砕いて分けてしまうことができるか、時間との戦いでもありますね。映画さながらの世界が展開されることになります。

結果、全てのNEMの所在が明らかになれば、仮想通貨の信頼性は一気に高まることになり、キャッシュレスの時代がぐんと近づきますね。姿かたちのないモノをどうやって見つけ出すのか、ここは仮想通貨への偏見が無くなるかどうかの注目の分岐点です。

あっ、そうそう、今回の事件とは関係のない仮想通貨の面白い世界、それは「アービトラージ」という禁断の手法を応用した取り引きで、この事についても書こうと思ったのですが、紙面が足らなくなりました。なんかおまじないの様な名前が付いていますが、調べてみると、「そんなことができるの?」「ホント!」といった言葉が飛び出すのは必然です。リクエストが多ければまた機会を見つけて書きますね。

みんな、額に汗して働きましょうネ。

 

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    佐々木 正洋
    佐々木 正洋
    1977年アナウンサーとしてテレビ朝日入社。16年間担当「夕刊キャッチアップ」の最高視聴率16%は今だ破られず。また、2002年出版の「ちょっとしたコツで誰でも『上手な話し方』が身につく」は、当時現役局アナとして近年初1万部を突破。猪木の闘魂ビンタの元祖。2012年独立。テレビ、ラジオで活躍の他、各種イベントの司会や講演を行い、「雑誌ネット」で記事批評を載せ、駒沢女子大学で講師を務める。インターネット、新聞などで世相を斬る、コラムニストでもある。北九州市観光大使