佐々木正洋のいまさら聞けない一般常識 ベテランアナがやさしく解説

2018.01.17

第11回 貴乃 花の乱

威厳とか権威とかを片っ端から壊していっているのか、壊れていっているのか、どの世界もブランドが木っ端みじんですね。もう少しだけ、優しくなれないものでしょうかねぇ?

そりゃ、池坊保子さんに対してだって『へぇーっ、この人、日本相撲協会の評議員会議長になっていたんだ』って思った人も沢山いたでしょう。

その昔、娘さんの家庭教師と不倫したって騒がれて、大胆なセミヌードも雑誌で披露し、その人が1996年には党首、小沢一郎氏率いる新進党近畿ブロック比例名簿順位1位(今のように誰も彼も名簿順位1位の時代ではなくよっぽどでないと1位にはならない)で衆議院議員に初当選して(当時新進党は野党第一党で156人を擁する大政党)、文部科学副大臣まで登りつめ、5期にわたって衆議院議員を務め、その後は財団法人日本漢字能力検定協会理事長にまで就任しているんですね。
しかしこの時も協会で内紛が勃発してクーデターが起こり任期途中で解任の憂き目にあっているんですね。

それでも2013年には旭日大綬章の叙勲と相成っている人ですから、ある意味、「池」は「池」でも小池百合子都知事よりスゴい人なのかもしれないですね。(^^♪お池にはまってさあタイヘン♪みたいな…。それもこれも華道家45世池坊家元池坊専永の妻という立場がそれを成し得させたのかもしれませんね。

いずれにしてもデヴィ夫人にとやかく言われるスジの人ではないんですね。平和ボケした国民が平和ボケしたマスコミに「次は何だ、次は何だ!」と急かすものだから、横綱、日馬富士の暴行事件が問題の本筋とかけ離れたところに行っちゃうんですね。

一応、僕もマスコミの末席を汚す者としてあんまりマスコミのことをとやかく言いたくないですが、最近のヒステリックな論調はとどまるところを知らないようにしか見えません。

元を正せば先輩が、それも天下の横綱が説教している時に携帯をいじっていた貴ノ岩関に非があるんですね。
ただし、暴力は絶対ダメですね。特に今のニッポンでは。
「じゃあ、どこなら暴力が許されるんだ!言ってみろ!」
と誰かに殴られそう⁉ですが、ひょっとしたらモンゴルではそれほどのことではなかったのかもしれないんですね。それが証拠にその暴行があった日に他のモンゴル横綱白鵬、鶴竜らはその後、何事もなかったかのようにラーメンを食べに行っていますよね。
しかも、元横綱、日馬富士ではなく、貴ノ岩関が日馬富士に謝りに行っているんですね。

こう言うと直ぐに安手のタレントが「我々の常識じゃ考えられないですね」とくる。
「我々の常識って」、彼ら日本人じゃないんですよ。日本人の常識で生きてないんですね。何も貴ノ岩関が頭に9針も縫うことになってしまった暴力を肯定している訳ではないですよ。

ただ、池坊保子さんと同種の意見になってしまうのが怖いんですが、そうなんですね、彼らは狩猟民族というか、騎馬民族なんですね。モンゴル帝国を築いた成吉思汗(チンギス・ハン)の血を引いていて、それはそれは激しいというか、獰猛なところのある民族なんですね。こういことって差別なんかじゃないですよ。

もう、『佐々木は人種差別の権化だ!』なんてすぐに言われそうで怖い怖い。
で、そういう人達が大相撲に入ってくるのを日本相撲協会がOKしたんじゃないんですか。だったら「強い」というのが兎に角一番だと、特にモンゴルの相撲取りは思っているに違いないんですね。

品格を重んじるんだったら、白鵬がどんなに強くても、「張り手」とか「カチ上げ」が美しくない、横綱として見苦しいのなら横綱にしなければ良かったんじゃないんですか、と言いたくなりますね、ちょっとへそ曲がりな僕としては。

だから、彼らに徹底して日本の相撲道、モンゴル相撲ではない「角道の精華」を叩きこまなければいけないと思いますよ。

今回の事件の中でそれを口にしたのは奇しくも貴乃花親方だけなんです。でもその「角道の精華」を口にしたのが彼の割には、あのふんぞり返っての態度は、改革も角道もあったものではありません。虚勢を張っているだけで薄っぺらに見えてしまいます。

もう6、7年前になりますか、僕が長野智子さんと共に司会を務めた「サンデー・スクランブル」という番組に貴乃花親方が出演してタニマチではない、サポーター制を熱く語ってくれたことがありました。正直、僕は大丈夫かな、と不安に思っていましたが、その生番組が終わった後、いつも出演者やスタッフが一緒に食事会をやるのが恒例でした。近くの居酒屋でやるんです。
そしたらそこに親方も顔を出したいと言っているというんですね。親方はその食事会というか飲み会にやって来てあまり多くは喋りませんでしたが、ケラケラ笑って「楽しいですね」と言っていたのを思い出します。

ふんぞり返ってなんかいませんでした。爽やかな青年実業家がいろんな世界を知る、勉強の為にそこにいるような、そんな雰囲気でした。
僕だけでなく生真面目な彼の姿に出席した全員が好印象を抱いたものでした。

今回は、相撲協会という権威に負けてはいけない、ということでにらみを利かせて突っ張っていたというのが本音なんだと思いますが、あれはやっぱりダメです。自分を悪者にして貴ノ岩関の窮地を救う作戦だったとしたら、そういう意味では、貴ノ岩関は2場所休んでも幕下より下がらないという相撲協会の結論に至った点で、「身を切らせて骨を断つ」景子さんという心強い参謀をつけて内心ほくそえんでいるかもしれませんが。

それに横綱白鵬との確執がクローズアップされて、なんだか相撲界の改革、ではなくて単なる意趣返し、なのかと思わせてしまった点もマイナスでした。

それでも初場所21歳の小兵小結・貴景勝関が初日に横綱稀勢の里を破りましたよね。本人はもちろん、貴乃花親方は嬉しかったでしょうね。まるで江戸の仇を長崎で、のような景色でした。親方が僕らと同席した頃は、幕内はおろか十両に貴乃花部屋の力士が一人いたかどうか、部屋の存続も危ういとささやかれていたんですから、感慨もひとしおだったと思います。

貴乃花親方の進もうとしている道はまだ閉ざされていません。この2月の理事選、「虎穴にいらずんば虎児を得ず」、出馬間違いなしの構え。貴乃花親方の真の改革は始まったばかり。第二幕「貴乃 花の乱」桜の季節が訪れる頃、どういう花を咲かせるか、見ものではあります。

    佐々木 正洋
    佐々木 正洋
    1977年アナウンサーとしてテレビ朝日入社。16年間担当「夕刊キャッチアップ」の最高視聴率16%は今だ破られず。また、2002年出版の「ちょっとしたコツで誰でも『上手な話し方』が身につく」は、当時現役局アナとして近年初1万部を突破。猪木の闘魂ビンタの元祖。2012年独立。テレビ、ラジオで活躍の他、各種イベントの司会や講演を行い、「雑誌ネット」で記事批評を載せ、駒沢女子大学で講師を務める。インターネット、新聞などで世相を斬る、コラムニストでもある。北九州市観光大使